東芝経営悪化の煽りを受けて(?)
「サザエさん」がCMスポンサーに”営業攻勢”
アニメ放送開始以来、48年にわたって変わらぬ暮らしを続けてきたサザエさん一家に、異変が起きつつある。やたらとCMスポンサーに磯野家がおもねっているように見えるのだ。
3月26日の放送は2400回記念で、一家が熊本・大分を旅行して、昨年大地震に見舞われた被災地を応援する内容だった。
ところがいきなり冒頭、サザエが「抽選で新型日産セレナが1名様に当たります」と宣言。マスオが「自動運転技術を搭載した話題の」と言えば、タラちゃんは「(車内の画面が)大きいでしゅね!」と合いの手を入れる。そして、一家はマスオの運転で、“セレナらしき車”に乗って観光名所を回り始めた。
車が颯爽と走る光景や、車中の快適な様子が何度も映され、観光と車のどちらが旅の目的かわからなくなるほど。もちろんその後、この新型セレナのCMが流れたのは言うまでもない。
その翌週、4月2日の放送回も奇妙だった。宝くじの新商品「ビンゴ5」のCMが流れたあと、本編では「マスオさんの秘密」というタイトルとともに宝くじ券のイラストが表示された。宝くじ売り場に通りかかったマスオと同僚のアナゴは、こんな会話を交わす。
アナゴ「ちょっと待ってくれ」
マスオ「宝くじを買っていくのかい?」
アナゴ「女房には内緒でね」
マスオ「買わないことには当たらないからね~。
よ~し、僕も買おう!」
こうしてマスオはサザエに内緒で宝くじを買い、その後も宝くじをめぐる話が延々と続いた。どうにもCMスポンサーに“サービス”しているようにしか思えない。
第1回から欠かさず見ているというサザエさんファンの碓井広義・上智大学教授(メディア文化論)は憤る。
「劇中で商品のコマーシャルするなんてこれまでなかったし、サザエさんの作品世界に浸ることができなくなってしまう。ファンタジーにビジネスを持ち込むのはやめてもらいたい!」
この件についてスポンサー側は、「劇中に車を登場させたいとテレビ局とお話ししてきたなかで、セレナが家族向けの車ということもあり実現した」(日産広報部)、「内容を提案したことはない」(みずほ銀行宝くじ部)とのことだった。フジは「番組制作の詳細についてはお答えしていない」(企業広報部)と回答した。
もしかしたら、メインスポンサーである東芝の経営悪化にサザエさん一家が危機感を覚え、他のスポンサーにおもねりはじめたのだろうか。かつてなら波平が“バッカモーン!”と一喝していたはずだが……。
(週刊ポスト 2017年4月21日号)