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週刊ポストで、ドラマ「やすらぎの郷」について解説

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『やすらぎの郷』は
視聴率主義への苦言込めた本物のドラマ
倉本聰脚本で話題の新ドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)。登場するのは、昭和の芸能史を煌びやかに彩る女優たちだ。

放送は、『徹子の部屋』を終えた平日12時半に始まる。若者向けのゴールデンタイムに対抗する枠として倉本が強くこだわった、「シルバータイム」なる高齢者のための新しい昼帯枠だ。

舞台は“テレビ界に貢献した人間だけ”が入居できる高齢者ホーム「やすらぎの郷」。昭和のテレビ黄金期に一時代を築いた脚本家の菊村栄(石坂浩二)を取り巻き、往年のスターたちがあれこれ騒動を巻き起こす。

現場でも小さな“騒動”が起きていた。倉本や浅丘ルリ子(白川冴子役)は大の愛煙家。テレビ朝日の六本木スタジオは禁煙のため、今回は愛煙家の要望から、喫煙できる場所でホン(脚本)読みをすることになった。浅丘は撮影現場でも吸っていたが、彼女のしなやかな指の動きはハッとするほど艶っぽかった。

劇中では水谷マヤ(加賀まりこ)が優雅に紫煙をくゆらせ、栄は「俺にとって一番体に悪いのは禁煙ってあの文字だ!!」と叫ぶ。石坂いわく、これは倉本の口癖らしい。喫煙シーンが描かれなくなった昨今、及び腰の制作者や嫌煙社会へのアンチテーゼでもあるのだ。

制作発表記者会見では、女優たちの熱量が溢れた。

25年ぶりに倉本作品に出演する五月みどり(三井路子役)が、「とても怖くてできないと思ったけれど、でも、どうしてもやりたいという気持ちが強かった」と決意を語れば、ピアノの弾き語りシーンがある有馬稲子(及川しのぶ役)は、「ピアノが本当にだめで1日に2小節ぐらいずつ練習して、1曲弾けるようになった」と舞台裏の女優魂を垣間見せた。

60代の同級生らと放送を楽しんでいるという上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、同作を「視聴率第一主義に対する苦言も含め、テレビ業界への愛と感謝を込めて今の時代に送る本物のドラマ」と評する。

「役者にも向けられたその愛を受けて集まったのが、この贅沢な顔ぶれです。中高年にとっては青春の憧れ。70代、80代で輝き続ける彼女たちの姿に、『人は最後まで自分の人生の主人公なんだ』と思えるのがまたいい」

女優たちにとって、年を重ねてもなお輝きを放つ晩年の今こそ、人生のゴールデンタイムではないだろうか。

(週刊ポスト 2017年5月19日号)

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