本が、生活空間を脅かし続けています。なんとかしなくてはと思いつつ、本は今日も増えるばかりです。
しかも、「さあ、今日こそ少しでも片付けよう」と動き出した途端、困った本を見つけてしまいました。立花隆さんの『立花隆の書棚』(中央公論新社)です。
「本についての本」というか、「本の本」として、突出した一冊と言えます。厚さは5センチ。小さなダンベル級の重さ。全ページの3分の1近くを占めるカラーグラビア、それも本棚ばかりの写真です。
膨大な本が置かれた自宅兼仕事場(通称ネコビル)をはじめ、所蔵する本が並ぶ“知の拠点”が一挙公開されています。ああ、こんなふうに、自分が持つすべての本の「背表紙」を見ることが出来たらシアワセだろうなあ、と泣けてきました(笑)。
読者は写真を見ながら内部を想像しつつ、この館の主の話に耳を傾けることになります。まず驚くのは、医学、宗教、宇宙、哲学、政治など関心領域の広さでしょう。各ジャンルのポイントとなる書名を挙げながらの解説がすこぶる興味深いのです。
しかしそれ以上に、時折り挿入される「本の未来」や「大人の学び」についての言葉が示唆に富んでいます。
「現実について、普段の生活とは違う時間の幅と角度で見る。そういう営為が常に必要なんです」。そして、それを促してくれるのが紙の本なのだと、この”知の巨人”はおっしゃるのです。
片付けるより、読むのが先だということになってしまいました。