「事実は一切ない」文春の反論に新潮が見解
「自浄作用が働かないこと露呈」
雑誌ジャーナリズムの両雄、「週刊文春」と「週刊新潮」のバトルが激化している。
5月18日発売の週刊新潮(5月25日号)は、発表前の週刊新潮の中づり広告を週刊文春側が出版取次会社から入手し、記事作成に利用していた“疑惑”をグラビア写真つきで大々的に報道。
これに対し、新谷学・週刊文春編集長は全否定する声明を同日、ニュースサイト「文春オンライン」上で発表した。
<「週刊文春」が情報を不正に、あるいは不法に入手したり、それをもって記事を書き換えたり、盗用したりしたなどの事実は一切ありません>
週刊新潮などによると、週刊文春の発行元である文藝春秋の営業担当が定期的に出版取次会社を訪れ、新潮の中づり広告を借りてコピー。
JR、地下鉄車内に出される中づり広告には、その週に発売される最新号のラインアップが掲載されており、締め切りは週刊誌より1日早くなっている。
文春側が中づりを事前にチェックし、最終的なラインナップや記事作成に使っていた疑惑があると新潮側は長期間、追跡調査していたという。
その主張に対し、新谷・週刊文春編集長は声明でこう反論した。
<「週刊新潮」の記事では、あたかも「週刊文春」が自らのスクープ記事を盗んでいるかのように書かれていますが、例として挙げられた記事においても、そうした事実は断じてありません。社会を騒がせている事件、人物等については、多くのメディアが当事者やその周辺を継続的に取材しており、その過程で他メディアの動向を把握するのは日常的なことです>
AERA dot.の取材に対し、「週刊新潮」編集部は以下の見解を寄せた。
<週刊文春編集長のコメントには、長年、文藝春秋社の営業担当者が出版取次会社から不正に週刊新潮の中吊りポスターを入手し、コピーしたうえで、文春編集部に届けている事実について、何ら釈明がありません。当然、これが正当な情報収集や「情報戦」に当たらないことは言うまでもなく、出版取次会社も「不適切だった」と漏洩の事実を認め、弊社に謝罪しております。にもかかわらず、潔く非を認めない週刊文春編集長の対応は、全く意外であり、驚きを禁じ得ません>
さらに新潮側は文春編集部に対し、こうも言及した。
<アンフェアな編集姿勢を反省しようとせず、自浄作用が働かないことを露呈した言葉であり、残念というほかありません。同誌の編集部の中には、このような不正を働かなくても、週刊新潮と充分戦えると思っていた記者はたくさんいたはずであり、文春の記者の方々が気の毒でなりません>
上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は語る。
「印象的なのは、新谷編集長の『他メディアの動向を把握するのは日常的なこと』という主張です。他の週刊誌の中づり広告を事前に入手する行為が他媒体で日常的に行われているとは思えないし、もし、新潮報道が事実であれば、姑息としか言いようがない。文春が読者の信頼を無くすだけでなく、雑誌メディアへの信用が一気に損なわれかねない」
AERA dot.編集部・小神野真弘
(AERA dot. 2017.05.18)