日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。
今週は、ドラマ「黒革の手帖」について書きました。
テレビ朝日系「黒革の手帖」
米倉涼子のイメージ払拭
武井咲に“銀座で一番若いママ”の貫禄
ドラマ「黒革の手帖」(テレビ朝日系)が好調だ。原口元子(武井咲)は銀座にある高級クラブのママ。しかし以前は派遣の銀行員だった。銀行が隠す不正な預金を横領し、それを元手に店をオープンしたのだ。
原作は1980年に出版された松本清張の同名小説で、これまでに何度もドラマ化されてきた。中でも13年前の米倉涼子主演作の印象が強い。同じ役を武井が演じると報じられた時は、「若過ぎる」とか「銀座のママのイメージと違う」といった声も聞こえたが、杞憂だったようだ。
普通のOL役では、やや浮いてしまうような武井の美貌が、夜の銀座という“異世界”で存分に生かされている。また衣装やメークだけでなく、その落ち着いた立ち居振る舞いと表情によって「銀座で一番若いママ」を見事に造形している。
さらに今回のドラマ化のオリジナル部分として、亡くなった父親が残した借金のために、元子と母親が苦労した過去をきちんと描いている。そのため悪女であるはずの元子に、見る側が“肩入れ”する余地が生まれた。羽原大介の脚本の功績だ。
脇役陣も充実している。銀座ママの真矢ミキ、病院長の奥田瑛二など、いかにも“らしい”面々が若い武井を支えている。成功を収めたかに見える元子だが、試練が待ち受けていることは必至。当分は目が離せない。
(日刊ゲンダイ 2017.08.02)