週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
レイモンド・チャンドラー:著
村上春樹:訳
『フィリップ・マーロウの教える生き方』
早川書房 1296円
マーロウはチャンドラーの小説の主人公だ。本書には作中から選ばれたハードボイルドな引用が並ぶ。「時が足音を忍ばせ、唇に指を当てて、しずしずと過ぎて行った」(時間)。「夜だった。窓の外にみえる世界は真っ暗だ」(夜)。他に酒や女や愛の名台詞も。
(週刊新潮 2018年5月31日)
川村二郎 『学はあってもバカはバカ』
ワック 994円
元「朝日新聞」編集委員が、世間に跳梁跋扈する「学のあるバカ」を狙い撃つ。相手は、「こだわる」を連発するアナウンサー、「ジャーナリスト」を自称する新聞記者、消費者を見下す商品開発者など。中には頭の良さが売り物の政治家もいる。自戒を促す合わせ鏡だ。
諏訪春雄 『日本の風水』
角川選書 1836円
中国から伝わってきた風水。「気」という観念が存在しなかった日本で、風水はどのように受け入れられてきたのか。中国の風水論と、東の青竜、西の白虎といった「四神相応」に基づく日本のそれを比較しながら、生活の中に溶け込んだ風水思想を明らかにしていく。
清水孝幸:著、佐藤正明 :イラスト
『定年が楽しみになる! オヤジの地域デビュー』
東京新聞出版局 1512円
「東京新聞」連載中の体験コラムが一冊に。50代半ばの記者が定年後を見据えて地域活動に挑戦している。将棋やラテンダンスのサークル、料理教室やボランティアにも参加。さらに「新聞記事の読み方講座」の講師までやってみる。定年後の人生もそう悪くない。
(週刊新潮 2018年5月24日号)
新津きよみ 『シェアメイト』
角川ホラー文庫 684円
どんな家で誰と暮らすのかによって女の運命は変わってしまう。同居していた幼なじみとの台湾旅行が恐怖を生む表題作。理想の邸宅に住み込みの家政婦として入った女の妄執を描く「魔取り」。女と住まいをテーマとした、じわりと怖い話が6編、軒を連ねる。
(週刊新潮 2018年5月17日菖蒲月増大号)