週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
山下洋輔 『猛老猫の逆襲』
新潮社 1728円
ミャンマーで国立交響楽団と共演したかと思うと、ウイーンの管弦楽団と「ラプソディ・イン・ブルー」。徳島では阿波踊りとのセッションが待っていた。現地で見たもの、聞いたもの、そして思い出したものが同時進行で語られていく。旅日記というライブ演奏だ。
末井 昭 『自殺会議』
朝日出版社 1814円
自殺をテーマにした本の第2弾。何らかの形で自殺に関わる10人と語り合っている。自殺した息子の霊とインドで出逢った映画監督の原一男。自殺の名所、東尋坊で自殺企図者を保護する茂幸雄。淡々とした言葉の中に、「生きづらさを解消するヒント」がある。
藤原新也 『メメント・モリ』
朝日新聞出版 1620円
最初の刊行から36年。「死を想え」と題された伝説の写真文集が、甦りのごとく復刊された。「本当の死が見えないと本当の生も生きられない」と著者は書く。たとえば岸辺に置かれた人骨。荒野にひとり立つ僧侶。鳥や犬に食われる遺体は私たちに何を語るのか。
(週刊新潮 2019年2月21日号)
神永 暁 『辞書編集、三十七年』
草思社 1944円
発刊と同時に改訂作業が始まる辞書。そんな辞書作りの裏側を、『日本国語大辞典』の元編集長が回想する。語彙の収集と分類。大量のゲラ(校正刷り)との格闘。作家・井上ひさしが、畏敬の念を込めて「刑罰」と呼んだ編集作業の奥深さと愉悦がじわりと伝わってくる。
相澤冬樹 『安倍官邸vs.NHK』
文藝春秋 1620円
著者はNHK大阪放送局の記者時代、森友事件をスクープした人物だ。しかし、核心に触れる内容を放送しようとした時、官邸に近い報道局長が立ちふさがる。取材先とのやりとりも公開しながら事の顛末を明かしたのが本書だ。内部から見た忖度報道の実態とは?
(週刊新潮 2019年2月14日号)
猛老猫の逆襲山下洋輔新潮社
自殺会議末井 昭朝日出版社
メメント・モリ藤原新也朝日新聞出版
辞書編集、三十七年神永 暁草思社
安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由相澤冬樹文藝春秋