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週刊新潮に、林操さんによる『ドラマへの遺言』書評

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倉本聰・碓井広義『ドラマへの遺言』

ヤクザ、経営者、政治家の大物が続々登場!
倉本聰と振り返る昭和・平成
題名が『ドラマへの遺言』で夕刊紙の連載がベースのインタビューもの。そう聞くと「ああ、狭いTV本か、軽い芸能本か」と思うでしょ? ところが、確かにTV本、芸能本ではあるものの、語られる世界は広く、テーマは重い。

まずは役者に歌手にタレント、TV屋に映画屋が実名でぞろぞろ出てきて、語り手の見聞きした彼らの言動が明かされるあたりは、もちろん読みどころ。でも、さらに加えてヤクザや経営者や政治家の大物までがあれこれ登場、意外な素顔を晒すからこの新書、文化だけじゃなく社会や経済、政治までカバーした現代史の書でもある。

ま、考えてみりゃ語り手はあの倉本聰、聞き手はTVドキュメンタリーの作り手でもあった碓井広義だもの、テキトーな本になるはずもない。“西武グループの帝王”堤義明にも“芸能界のドン”周防郁雄にも臆さず触れるわ、ニッポンという国の棄民の実態もTVの劣化・ドラマの変節も厳しく批判するわという広さと深さは、たとえば昭和史・平成史をテーマとする後世の研究者にとって一級史料になるだろうと思えるレベルなんです。

いや、読んでほしい人は未来の歴史家以外にもたくさんいる。倉本作品をロクに観たことがないというアナタにも、いや、そういうアナタこそ、手に取ってください。落ちるところまで落ちた後、上るところまで上って、今また落ちてるこの国の姿が、よぉく見えてくるから。

レビュアー:林操(コラムニスト)


(週刊新潮 2019年3月21日号)




ドラマへの遺言 (新潮新書)倉本聰、碓井広義新潮社



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