週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
大沢在昌
『帰去来』
朝日新聞出版 1944円
志麻由子は警視庁捜査一課の刑事だ。連続殺人犯を追っていたが、首を絞められ気絶する。気がつくとそこは異次元の東京で、自分はエリート警視になっていた。パラレルワールドと知りつつ、任務を果たそうとする由子。タイムトリップの驚くべき“理由”とは?
中尾則幸
『海わたる聲』
柏艪舎 1404円
昭和20年8月22日、樺太からの引揚げ船「泰東丸」はソ連潜水艦の攻撃を受ける。約670名の犠牲者のほとんどが女性と子供だった。本書は札幌のテレビマンだった著者が、かつての取材経験を生かしながら、忘れてはならない悲劇を小説の形で伝えようとしたものだ
片山杜秀
『鬼子の歌~偏愛音楽的日本近現代史』
講談社 3456円
近現代日本のクラシック音楽作曲家たちの仕事は、西洋流の文学や美術と違い、「鬼子」扱いだったと著者は言う。山田耕筰のオペラ「黒船」、伊福部昭の「ゴジラ」、黛敏郎のオペラ「金閣寺」など、彼らの軌跡と作品にスポットを当て、再評価していく試みだ。
(2019年3月14日号)
阿川佐和子
『いい女、ふだんブッ散らかしており』
中央公論新社 1296円
中央公論新社 1296円縦横無尽に話題が飛び出す最新エッセイ集だ。部屋の散らかり具合と「いい女の条件」。かまやつひろし、長友啓典など友人との別れ。「呼び名問題」にかこつけての結婚報告。かと思うと「へんな男にコマされるなよ」に始まる、「男の捨て台詞」ベスト3も秀逸だ。
(2019年3月7日号)