孤独であっても人は生きていける
五木寛之 『続・孤独のすすめ』
中公新書ラクレ 842円
五木寛之『続・孤独のすすめ人生後半戦のための新たな哲学』を読了して、なぜこの本を読みたかったのか、ようやく気づいた。まさに人生の後半戦を生きている自分の考え方が、そんなに間違っていないことを確認したかったのだ。
現代は、だれもが孤独から逃れる道を探している時代だと著者は言う。そうかもしれない。電車の中の“乗客全員スマホ中”という一種異様な光景もその反映なのだろう。しかも「安直な絆だけを求めてはだめ」で、孤独であっても「人は生きていけるのだ」と続く。多分そうだ。
その上で孤独を「和して同ぜず」と定義づけている。それぞれが「自己の持つ特異性や個性、才能などを守りつつ、他と集団を生きる。他人とちがう自分を守る」ことが孤独の本質だという指摘。これは納得できる。
ならば具体的に、どう生きたらいいのか。あれかこれかの二者択一をやめること。「共に生きる」と「和して同ぜず」の共存だ。一般的に「二心(ふたごころ)ある」という言葉は悪い意味で使われることが多いが、著者はこれを、孤独者が群れと接触するための戦略と捉える。この辺りで、「ああ、それでいいんだ」とホッとした。
何しろ孤独について、著者の思索には年季が入っている。1968年のエッセイ集『風に吹かれて』にも、「たとえ理想の未来社会が私たちのものになったところで、人間の孤独といったものはやはり存在する」という文章があるくらいだ。汝の孤独を愛せよ。
(週刊新潮 2019年4月4日号)