北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。
今回は、4日に贈賞式が開催される「第51回ギャラクシー賞」に
ついて書きました。
ギャラクシー賞「入賞作」に注目
4日に、「第51回ギャラクシー賞」の贈賞式が開催される。放送界の大きな賞の一つであり、テレビ、ラジオ、CM、報道活動など部門ごとに審査が行われる。贈賞式当日には、すでに公表されている入賞作の中から、さらに選ばれた大賞と優秀賞が発表される予定だ。
テレビ部門の入賞作は全部で14本だ。ここでは大賞や優秀賞に輝くかどうかの予想ではなく、注目作をピックアップしてみたい。
まずは全体の傾向だが、14本のうち7本が地方局の制作によるもので、その健闘ぶりがうかがえる。
たとえば東海テレビ「熱中コマ大戦〜全国町工場奮闘記〜」では、地域の町工場の職人たちが自作の「喧嘩(けんか)ゴマ」で全国大会に挑む姿を追っている。モノ作りの国を支える人たちの汗と矜持(きょうじ)が感動的だ。
また、松島湾に位置する人口600人の島の暮らしや文化を描いた、東北放送の「島の詩(うた)〜奥松島の宮戸・月浜ものがたり〜」。
この番組では海苔(のり)の復活から民宿の再開まで、復興に向けて歩む島の人たちに密着している。
ドラマの入賞作は2本ある。1本はNHK「あまちゃん」で、もう1本がテレビ朝日の山田太一ドラマスペシャル「時は立ちどまらない」だ。いわゆる震災ドラマだが、薄っぺらな「絆」や「つながり」、安易な「涙」に満ちた「いい話」とは一線を画していた。
妻と孫を失った老人(橋爪功)が言う。援助される自分は「ありがとうと言うしかない」。だがそんな立場は「俺のせいか?」とも思う。そこにあるのは支援される側の心の負担の問題だ。
さらに被災地に暮しながら家も家族も無事だった男(中井貴一)は、何も失っていないことに罪悪感を抱いている。不公平だとさえ言い、「自分の無事が後ろめたいんです」と悩んでいる。
だがその一方で、支援する側として「そうそう他人の身になれるか」という反発心も押さえきれない。
ドラマは相反する思いが同居する当事者の心情を、巧みなストーリーとセリフで表現していた。震災から3年。これからが本当の絆が問われる正念場だと教えてくれる秀作だ。
最後に道内局の成果だが、報道活動部門の入賞作6本の中に、STV札幌テレビ「タンチョウ衝突死〜保護活動への警鐘〜」がある。
タンチョウの保護活動が招いた、生息地の過密化現象や列車衝突死というジレンマにスポットを当てた地道な取り組みだ。多くの候補作の中から選ばれ、見事入賞を果たしたことに拍手を送りたい。
(北海道新聞 2014.06.02)