日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、フジテレビ「HERO」について書きました。
フジテレビ「HERO」
“優れたキムタク・ドラマ” だった
先週、フジテレビ「HERO」が最終回を迎えた。視聴率は22.9%。全話の平均視聴率も21.3%と最近のドラマとしては好記録を残した。そこで、あらためてこのドラマを総括してみたい。
まず、主演の木村拓哉について。どんな主人公を演じても変わらない。役柄よりキムタクであること。それが“キムタク・ドラマ”と揶揄される所以だ。
確かに「安堂ロイド」の未来型ロボットも、「月の恋人」のインテリアメーカー社長も、「PRICERESS」の貧乏男も、みんなキムタクにしか見えなかった。
だが、そのこと自体が悪いわけではない。役柄がキムタクに合ってはいないのに、“キムタク・ドラマ”という一点だけで押し通そうとしたことに無理があった。
しかし、「HERO」は違う。キムタク自身が「かくありたい」と思うキムタクと、久利生公平というキャラクターとの間の誤差が少ないのだ。だから見る側も安心して「久利生≒キムタク」を楽しむことができた。
それを可能にしているのは、主役を立てながらも群像劇としての面白さをしっかり組み込んだ、福田靖の脚本だ。シリアスとコミカルのバランスも絶妙だった。また、そんな脚本を体現した役者たちにも拍手だ。
トータルで、「HERO」は単なる”キムタク・ドラマ”ではなく、“優れたキムタク・ドラマ” だったのである。
(日刊ゲンダイ 2014.09.30)