北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。
今回は、道内各局が入賞した「日本民間放送連盟賞」の事績に
ついて書きました。
「日本民間放送連盟賞」優秀賞受賞の道内各局
詐欺撲滅 継続は力なり
放送界には、放送批評懇談会が選ぶ「ギャラクシー賞」、全日本番組製作社連盟(ATP)の「ATP賞」など、いくつかの大きな賞がある。「日本民間放送連盟賞」もその一つで、その名の通り全国の民放局で構成される日本民間放送連盟が主催しているものだ。
先月、今年の結果が発表されたが、テレビやラジオの異なる部門で道内の5作品が優秀賞を受けた。その中のテレビに関する事績について、各取り組みの意味を考えてみたい。
まず「テレビエンターテインメント番組」部門で受賞した、HBC北海道放送『北海道まるごといただきま〜す!わんぱく保育園の食育日記』。小樽の「かもめ保育園」を舞台に、大人が一日入園することで、成果を上げている食育の現場を分かりやすく伝えていた。中でも「食の生産に子供たちが関わる」という試みがユニークだ。教育評論家・尾木直樹と子育て中のココリコ・田中直樹のコンビの起用も成功していた。
次が特別表彰部門「青少年向け番組」のSTV札幌テレビ『どさんこワイド179〜みる・みる・みらい スペシャルウイーク〜』だ。この番組の特色は、帯広農業高校酪農科学科養豚班の3年生に半年間も密着したことにある。彼らは豚の出産から育成、出荷、そして最後は食べることまでを体験する。「命とは何か?」と自分に問いながら学ぶ姿が印象的だ。
そして同じ特別表彰部門の「放送と公共性」では、HTB北海道テレビ『HTB詐欺撲滅キャンペーン「今そこにある危機」』が受賞した。年々増加する振り込め詐欺は高齢者が被害者となることが多い。HTBは夕方の情報ワイド番組「イチオシ!」にコーナーを設け、1年以上も警鐘を鳴らし続けてきた。
注目すべきは、このキャンペーンを毎日、放送してきたことだ。現在も、記者たちは日常活動と併行して素材を探し、1日も欠けることなく詐欺に関する情報を流している。表面に出ることを嫌いがちな被害者の証言を伝え、再現も含めて新たな手口を具体的に紹介する。「自分だけは大丈夫」と思っている人ほど危ないのが振り込め詐欺なのだ。
たとえ時間・人数・予算が限られていようと、「今伝えるべきこと」を発信し続ける地域メディア。これは今後のローカル局のあり方に大きな影響を与える取り組みでもある。
STVとHTBの事績で特に顕著なのが「継続」の力だ。半年の継続取材、1年以上の継続報道と、粘り強く取り組むことで生まれるものは実に豊かだ。
(北海道新聞 2014.10.06)