コメントした、週刊新潮の「朝日新聞」問題の特集記事が、新潮社のサイトにアップされました。
先日、このブログで一部を紹介しましたが、全文が読めるようになったので、以下に転載しておきます。
「売国」「誤報」は黒塗り「ペテン」はOK
「広告審査」のデタラメ
続・おごる「朝日」は久しからず
載せたり、載せなかったり、塗りつぶしたり。本誌の広告掲載について、朝日新聞の対応は支離滅裂と言うほかない。納得しうる基準をまったく示せないまま、場当たりで恣意的に対応し、後からご都合主義で理屈をくっつける。まるで広告審査の体をなしていないのだ。
*********
池上問題についての“釈明”記事を掲載する前日の9月5日夕のこと、
「編集局長室に編成局長や報道局長らが集まり、経緯掲載記事を“1面に載せるべきだ”“池上さんと話し合う前に載せるべきではない”などと意見が交わされ、かなり揉めていました」
と言うのは朝日の幹部社員。さらに若手社員も、
「その晩、現場のデスクやキャップが、いちど決まった“釈明原稿”では説明が不十分だと編集幹部に詰め寄り、騒然となりました」
と証言するが、広告をめぐる対応も同様である。
朝日は本誌9月4日号の広告を、〈部数がドーン!〉など2カ所の表現が問題だとして掲載拒否した。一方、9月11日号に対しては、「売国」「誤報」という文言に抗議しつつも、最終的には掲載した。迷走し、審査基準を見失っていると思しき対応だが、加えて、「売国」「誤報」の2語を勝手に塗りつぶしたのである。
さらに言うなら、8月28日号の広告は、「ペテン」という語に朝日は強く抗議しながら、そのまま掲載した。しかし、どうして「売国」や「誤報」はダメで「ペテン」はよいのか、一切明かされないのだ。労組に寄せられた声を拾ってみると、
〈個人情報保護法の情報統制・言論弾圧を批判しながら、意見が違うといって掲載を断る社の姿勢には、一般の読者にとって説得力など無いでしょう〉(広告・30代男性)
〈自分たちに都合の悪い意見を聞かない、載せない。これでリベラルな新聞と言えるのでしょうか〉(編集・30代女性)
これらは“池上問題”への批判だが、“広告審査”にもそのまま当てはまるだろう。上智大学の碓井広義教授(メディア論)も言う。
「新潮の広告の塗りつぶしは、言論弾圧が激しかったころの検閲や墨塗り教科書をイメージしてしまう。言論で仕事をしている会社が、自分の利益を守ろうとして言論を抹殺することに危機感を覚えます。広告も表現であり文化の一端を担っている。その情報が遮断されれば読者にとっても不利益になるし、言論機関ならば広告はそのまま載せ、記事の内容に反論があるならそれを具体的に示し、読者の判断にゆだねるべきです」
■「元に戻す努力を…」
ほかにも、朝日の対応がチグハグな例をひとつ。
「菅官房長官は国連人権委員会のクマラスワミ報告に“朝日の報道が影響した”と明言した。これまでの朝日ならすぐに反応し、全社あげて批判するのに、何も語っていない。朝日は自分に不利だとダンマリを決め込んでしまう。日和見なのです」(京都大学名誉教授の中西輝政氏)
何から何まで支離滅裂で制御が利かない朝日新聞が、再生する道はあるのか。
「第三者による調査委員会を作り、どういう経緯で誤報が掲載され、責任者は誰なのかを明らかにすべきでしょう。そうしないと、いつまでたっても火だるま状態から抜けられない」
と、元朝日新聞常務の青山昌史氏は言うが、それだけでは収まらない。アメリカ人弁護士のケント・ギルバート氏が訴える。
「慰安婦の強制連行は国連人権委員会やアメリカの議員をはじめ、国際的に信じられています。朝日新聞は自分が広げたそういう被害を、元に戻す努力をする必要があります。まずは“国連関係者各位”とか“韓国のみなさまヘ”と書いた英語や韓国語の謝罪文を、見開きで掲載すべきです」
信頼回復への道のりはあまりに遠い。
(「特集 続・おごる『朝日』は久しからず」より
「週刊新潮」2014年9月18日菊咲月増大号)