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読売新聞で、「産経新聞前ソウル支局長起訴」に関してコメント


読売新聞に、産経新聞の前ソウル支局長が、韓国で起訴された問題に関する記事が掲載されました。

この中で、コメントしています。


韓国 日本の報道拡散
産経前支局長起訴
乱立のネット新聞で
インターネットに掲載した日本語コラムで、韓国の朴大統領の名誉を毀損したとして、産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長(48)が8日、在宅起訴された。

朴政権の意向が働いたとされるが、背景には、韓国での5000法人に迫るネット新聞の乱立と、日本メディアの報道を日常的に翻訳して伝える韓国メディアの慣習もある。

■翻訳

「日本の報道機関が、日本の読者に向けて、日本語で執筆した記事を、関奥が国内法で処罰するということが許されるのかという疑問を禁じ得ない」。産経新聞の熊坂隆光社長は8日発表した声明で疑問を呈した。

コラムは8月3日に産経新聞のサイトに日本語で掲載された。それが韓国で広く読まれたのは、翌4日、韓国の左派系ニュースサイト「ニュースプロ」がこれを韓国語に翻訳して自社サイトに掲載したからだ。「ツイッター」などで拡散し、ネット上には大統領に批判的な書き込みが増えた。

韓国政府の統計によると、ネット新聞の登録件数(2013年)は4916件で、2005年の約17倍。韓国政府はネット上で飛び交う「流言飛語」に神経をとがらせてきた。朴大統領は9月16日の閣議で、「(ネットで)根拠のない暴露発言が度を越え、社会の分裂をもたらしている」と訴え、韓国検察も取り締りを強化する方針を示していた。

韓国は過去にも、日本メディアや関係者を刑事処分したり、民事訴訟を起こしたりしてきた。読売新聞は08年の島根県・竹島を巡る記事で、当時の韓国野党幹部から「韓国民の領土権や名誉が傷つけられた」と民事訴訟を起こされた。ソウル中央地裁は10年に請求を却下。原告は控訴したが、最高裁も下級審の判断を指示し、読売が勝訴した。

■「報道の自由」脅かす

こうした韓国の強行姿勢について、法律家や識者の多くは「報道の自由」を脅かすものだと指摘する。

韓国検察が産経新聞の前支局長に適用した情報通信網法が施行されたのは01年。1990年代から芸能人の私生活を撮影したビデオが流出するなど、ネット上の名誉毀損が急増し、社会問題化していた。

韓国刑法の名誉毀損罪の罰則が5年以下なのに対し、情報通信網法に基づく名誉毀損罪は7年以下の懲役から5000万ウオン(約508万円)以下の罰金で、より厳しい。ネット上で情報が無限に増殖することを考慮したとされる。

法律家の間では、日本でも、仮に日本在住の外国人記者が外国語で、日本人の名誉を傷つけるような虚偽の記事をネット上に載せた場合、記者を名誉毀損罪で起訴することは可能だとの見方が強い。日本でネットの記事を閲覧できれば、日本国内で被害が生じたとみなせるためだ。

しかし、日本では、報道は「公益性」の高さが重視され、その内容が真実か、もしくは真実だと信じる相当の理由があれば、違法性はないとされる。たとえ報道の内容が真実でなくても、刑事責任まで問われることはほとんどない。報道が、政治家のような公人に関するものであれば、なおさらだ。

碓井広義・上智大教授(メディア論)は「『報道の自由』は社会を支える重要な柱の一つで、日本の捜査機関もそれを十分に認識している」と話す。

■引用

コラムは無断で韓国語に翻訳され、韓国のニュースサイトに掲載されたことで拡散した。前支局長に、朴大統領の名誉を韓国内でおとしめる意図があったか疑問が残る。

韓国検察は、前支局長は取材を尽くさず、虚偽の記事を書いたと指摘している。ただ、問題のコラムは、韓国紙「朝鮮日報」のコラムを引用したものだった。朝鮮日報やその執筆者は起訴されておらず、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「一義的に朝鮮日報の記事が対象となるべきで、産経新聞だけが起訴されるのは公平性に欠ける」と話す。

韓国紙「韓国日報」も9日、「(朝鮮日報のコラムは)大きな脈略では(加藤氏のコラムと)同じとの指摘があり、産経新聞だけを問題視すれば公平性が問題になる」と指摘した。

(読売新聞 2014.10.10)

目で見る文学史、林忠彦『文士の時代』

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嬉しい復刊です。

林 忠彦 『文士の時代』 (中公文庫)。

朝日新聞社から86年に単行本、88年に文庫本が出ていましたが、増補を加えた新編集版です。

表紙の坂口安吾は、見た記憶をもつ人も多いはず。

銀座のバー「ルパン」での太宰治も、林さんの作品です。

織田作之助を撮っていた林さんに、坂口安吾と並んで飲んでいた酔っ払いが、「おい、俺も撮れよ。織田作ばっかり撮って。俺も撮れよ」と声をかけた。

それが太宰でした。有名なエピソード。

ほかにも川端康成、谷崎潤一郎、志賀直哉、佐藤春夫など、確かに「文士」としか言いようのない佇まいです。

いずれも昭和21年から46年にかけて撮影された写真なので、45年に亡くなった三島由紀夫も見ることができます。

直接、彼らと接してきた林さん。

文士たちについて書かかれた文章がまた、とてもいい。

カメラのレンズを通じて、人物を見抜いてしまうんですね、きっと。


今週の「読んで書評を書いた本」は次の通りです。

中山七里 『アポロンの嘲笑』集英社 

宮崎 学 『突破者外伝』祥伝社

石川直樹ほか 『宮本常一と写真』平凡社

松田哲夫 『縁もたけなわ』小学館

筑摩書房編集部 『スティーブ・ジョブズ』筑摩書房

* これらの書評は、
  発売中の『週刊新潮』(10月16日神無月増大号)
  読書欄に掲載されています。

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【気まぐれ写真館】 「富より健康」松田牛乳 (長野県大町市)

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産経新聞で、「絶好調のNHK朝ドラ」について解説


先日、産経新聞で、NHK朝ドラについて解説した記事の全文が、
産経のサイトにアップされました。

以下に転載しておきます。


相乗効果が生む 朝ドラ絶好調
進取の気風、良質な作品、
視聴習慣、ネットで話題
NHK連続テレビ小説(朝ドラ)がヒットを続けている。「あまちゃん」「ごちそうさん」に続いた「花子とアン」は9月27日に放送終了し、全話平均22・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、過去10年の朝ドラで最高視聴率を記録。その後、始まった「マッサン」も1週目から毎回20%台を連発し、朝ドラの“常勝ぶり”を見せつけている。その理由はどこにあるのか-。

■BSでも過去最高

 「『花子とアン』は大変よく見ていただいた。『ごちそうさん』の平均22・4%を上回り、BSプレミアム放送分も平均6・8%と過去最高。俳優さんたちの幅広い演技が魅力だったと思う」

NHKの籾井勝人(もみい・かつと)会長は今月2日の定例会見で、「花子とアン」の視聴率を満足そうに振り返った。

実家が福岡県で炭鉱を経営していた籾井会長にとって、劇中に登場した福岡の炭鉱王「嘉納伝助」には特に思い入れが強かったようだ。「波瀾(はらん)万丈の半生を送った吉高由里子さん演じる花子、仲間由紀恵さん演じる蓮子…」と、出演者と主要登場人物を紹介するなかで、伝助については「非常に人気を博しました」と付け加えるのを忘れなかった。

■ダブルヒロインの妙

「花子とアン」はカナダの女性作家、モンゴメリの「赤毛のアン」を翻訳した村岡花子の生涯を描きつつ、家族や友人たちの苦難と成長も描かれた。蓮子や伝助に加え、花子の両親や兄妹、幼なじみ、女学校編での外国人教師や同窓生…。魅力的な登場人物によるサイドストーリーも大きな見どころだった。

上智大の碓井広義教授(メディア論)はこう指摘する。

「特に仲間さん演じる蓮子の存在が出色だった。朝ドラに『白蓮事件』という不倫スキャンダルを取り入れ、正統派ヒロインである花子と、異端といえる蓮子を対照的に並べてみせた。正統と異端、日常と冒険のブレンド加減が絶妙で、2人の『ダブルヒロイン』が車の両輪のように存在感を発揮したことが作品の成功につながった」

■ドラマを盛り上げる「仕掛け」

ただ、ドラマ終盤では、ある重要な役柄をめぐって視聴者の賛否は分かれた。放送最終週、花子が翻訳する「赤毛のアン」刊行を決める出版社社長を、演技経験のない脳科学者の茂木健一郎さんが演じた。茂木さんの演技はインターネットを中心に注目を集め、ツイッターなどでは「棒読みすぎる」といった否定的な意見も上がった。

碓井教授は「茂木さんに罪はないが…」と前置きしたうえで、「作品を見続けてきた視聴者にとっては非常に重要な場面。物語をきちんと着地させるため、演技経験のある人を起用すべきだった。好調を受けた制作陣の『遊び』だったとすれば的外れで、もっと前の段階でやるべきだった」と批判する。

一方、理解を示す意見もある。ドラマ評論家の成馬零一さんは「茂木さんの演技を『あさイチ』や『スタジオパークからこんにちは』で出演者たちが話のネタにするなど、他の番組も巻き込んだ形でドラマを盛り上げる仕掛けになっていた」と指摘する。実際、茂木さん出演後の「あさイチ」では、NHKの柳沢秀夫解説委員が「なんで茂木さんなの?」と疑問視。有働由美子アナウンサーがフォローに回る“珍場面”もあった。

最近は、朝ドラ放送後の「あさイチ」冒頭で有働アナたちがドラマの感想を言い合うことがお約束となっており、ドラマ出演者が番組宣伝も兼ねて昼のトーク番組に出演することも多い。朝ドラや大河を軸に他番組も連動していくNHK特有の番組編成が作品の熱気を高めているのは確かだろう。

■「マッサン」も「流れ」に乗るか

それにしても、近年の朝ドラがここまで支持を集めるのはなぜなのか。

成馬さんはこう分析する。

「朝ドラは低調だった時期もあるが、『ゲゲゲの女房』の頃から良質な番組作りが再評価され、『カーネーション』や『あまちゃん』でコアなファンも得た。朝ドラへの関心の高まりがマスメディアやネットで話題になり、より注目を集める相乗効果になっている。毎日15分という短さも見やすく、視聴習慣が根付いてきている」

初の外国人ヒロインを迎え、国際結婚した夫婦がウイスキー造りに奮闘する最新作「マッサン」も堅調なスタートを切っている。

碓井教授は「帰国早々に母親と対立するという大胆な導入や、ヒロインだけでなく『夫婦』を軸に物語を描こうとしている点など注目点が多く、『マッサン』にも期待したい。朝ドラ人気はしばらく続くのでは」と予想する。

「ヒロインの成長物語」を基調としながらも、ドラマ制作の新たな試みを盛り込んでいく出演者と作り手のチャレンジ精神こそが、朝ドラ人気最大の理由なのかもしれない。(三品貴志)

(産経新聞 2014.10.07)

【気まぐれ写真館】 松本駅の喫茶店で

信濃毎日新聞で、「録画再生率」について解説


故郷の新聞であり、信州では圧倒的なシェアを誇る「信濃毎日
新聞」。

13日の紙面に掲載された「録画再生率」についての記事の中で、
解説しています。


番組作りが変わる? 録画再生率公表 
来年から本格運用
ビデオリサーチが録画再生率を初めて公表し、放送業界に反響が広がっている。録画機の普及が進み、現行のリアルタイムの視聴率に反映されない視聴動向を把握するのが狙いで、同社は来年1月から運用を本格スタートさせる。

新たな評価指標が加わり、今後の番組作りが変わるのか。関係者の声を集めた。

7月に試験的に公表されたのは、関東地区300世帯で3月31日~6月29日に行われた調査結果だ。録画番組が放送後7日以内に再生された割合を集計し、トップは池井戸潤原作の「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS)の7.7%(全話平均)だった。

TBSによると、番組の全話平均の視聴率は14.5%。同番組を含め、上位20番組中、17番組をドラマが占め、バラエティーやスポーツに比べ、ドラマを見る傾向が強いことが明らかになった。

調査対象世帯やサンプル数が違うため視聴率と録画再生率の数字を単純に比較できないが、今回の結果に各民放では「テレビ離れと言われる中、本当はテレビが見られていることが裏付けられた」と歓迎。

一方で「われわれにとってCMを出してくれる会社は神様のような存在。録画視聴ではCMがスキップされる可能性が高く、手放しんい喜べない」と複雑な胸中を語る幹部も。ビデオリサーチの調査では、録画再生中のCMスキップ率は約5割だったという。

「これからもテレビの制作現場はリアルタイムで熱狂できる番組を目指すべきだ」。そう力説するのは、プロデューサー時代に「東京ラブストーリー」など多くの大ヒットドラマを手がけた大多亮・フジテレビ常務だ。

一例として、同局の夏クールのドラマ「昼顔」を挙げる。「不倫妻」を題材にして話題を集め、視聴率やネット有料配信が好調で、大多常務は録画再生率も高いと推測。「職場や学校で話題となり、見たいという気持ちをあおるものが結局は録画率も高くなるはずだ」

碓井広義・上智大学教授(メディア論)は「今後、録画視聴を前提とした大人向けの良質な番組が増える可能性もある」と予測。

CMスキップはネックだが、「広告業界はスキップされないぐらい質の高いCMを作る方向にいくべきだ。一方で番組中に商品紹介が自然と入ってくる番組が増えるだろう」と指摘している。

(信濃毎日新聞 2014.10.13)

本気で取りにきた、「ドクターX~外科医・大門未知子~」


日刊ゲンダイに連載中の「TV見るべきものは!!」。

今週は、テレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」を取り上げました。


すべてはヒロインのため
第一印象は、「本気で取りにきたなあ」である。先週スタートした、テレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」だ。

「相棒」と並ぶ二枚看板の名にかけて、初回に勝負してくるとは思っていたが、その“エンタメぶり”は予想以上だった。

まず「国立高度医療センター」という新たな舞台を設定。手術室など施設や設備を含め、病院としてのスケールがぐんとアップした。

またそこに居並ぶ面々が豪華だ。いきなり更迭される総長に中尾彬。入れ替わる新総長は北大路欣也。そして次期総長の座を狙うのが古谷一行である。

ライバル関係が続く外科部長は伊武雅刀と遠藤憲一。前シリーズで帝都医大を追われながら、しっかり西京大病院長に収まっている西田敏行も元気だ。

この面子を見ながら、「白い巨塔」(フジ)と「華麗なる一族」(TBS)と「半沢直樹」(同)がオーバーラップして苦笑いした。

男たちの権力争いは往年の東映やくざ映画のようにむき出しで、遠慮がなく、分かりやすい。すべてはヒロインのためであり、そのおかげで実質的紅一点である大門未知子(米倉涼子)の印象が鮮やかなのだ。

舞台の病院が変わろうと、男たちの争いが激化しようと、大門¬=米倉は決して変わらない。超のつく手術好き、天才的な腕前、少しヌケた男前な性格。このブレなさ加減こそがシリーズの命だ。

(日刊ゲンダイ 2014.10.14)


【気まぐれ写真館】 四谷界隈夕景

地域と併走するローカル局の挑戦 


ビジネスジャーナルに連載しているメディア時評、碓井広義「ひとことでは言えない」。

http://biz-journal.jp/series/cat271/

今回は、民放連賞「放送と公共性」について書きました。


ローカル局が熱い?活発化するテレビの挑戦 
視聴率競争とは一線
地域と併走する意欲的試み
●日本民間放送連盟賞 特別表彰部門「放送と公共性」とは

放送界には、放送批評懇談会が選ぶ「ギャラクシー賞」、全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)が選ぶ「ATP賞」など、いくつかの大きな賞がある。「日本民間放送連盟賞」もその一つで、全国の民放各局で構成される日本民間放送連盟(民放連)が主催しているものだ。

番組部門、CM部門、技術部門などに分かれており、今年筆者は特別表彰部門「放送と公共性」の審査員長を務めさせていただいた。一緒に審査に当たったのは石澤靖治(学習院女子大学長)、入江たのし(メディアプロデューサー)、木原くみこ(三角山放送局会長)、村上雅通(長崎県立大学教授)の各氏だ。

この部門の特色は、応募事績の幅広さと奥行きにある。「番組」という枠にとどまらない複合的な取り組み、新たな視聴者・聴取者サービスへの挑戦、さらに「放送のあり方」そのものを探る試みなどを含んでいるからだ。

各地のローカル局が、民放らしい日常的な視聴率競争とは一線を画しながら取り組んでいる果敢な「放送活動」。今年の全入賞作(最優秀賞1本、優秀賞4本)を通して、放送の現在を見てみたい。


<最優秀賞>

●ドキュメンタリー映画とテレビの未来(東海テレビ)

戸塚ヨットスクールの現在を追った『平成ジレンマ』(2011年)に始まり、最新作『神宮希林 わたしの神様』(14年)まで、東海テレビが製作したドキュメンタリー映画は計7本に上る。死刑事件の弁護を請け負う弁護士をテーマにした『死刑弁護人』や『約束 名張毒ぶどう事件 死刑囚の生涯』など話題作も多い。

注目すべきは、この取り組み自体が現在のテレビに対する鋭い問いかけになっていることだ。NHK以外では、たくさんの人の目に触れる時間帯で放送されないドキュメンタリー。テレビにおけるこのジャンルの位置。賛否両論があるテーマの扱いが制限される最近の傾向。ローカル局からの発信が全国に届かない現状。それらが閉塞感を生み出し、作り手の意欲を削いでいるのではないか。

東海テレビはそこに風穴を開けた。テレビであることの制約を超えた内容を盛り込み、全国の劇場や自主上映の会場で直接、視聴者(市民)に見てもらう。また、その反応を確かめるだけでなく、時にはつくる側と見る側との交流や議論も行う。

さらにデジタル時代に逆行するかのようなアナログ的コミュニケーションから得たものを、今度はテレビにフィードバックさせていく。このテレビと映画の間を往還する取り組みの継続は、映像表現の場としてのテレビを捉え直し、再発見することにつながるはずだ。


<優秀賞>

●HTB詐欺撲滅キャンペーン「今そこにある詐欺」(北海道テレビ)

視聴者に役立つ情報を提供することは、放送の大事な役割の一つである。年々増加する振り込め詐欺は高齢者が被害者となるケースも多い。北海道テレビは夕方の情報ワイド番組『イチオシ!』にコーナーを設け、1年以上も警鐘を鳴らし続けてきた。

特筆したいのは、このキャンペーンを毎日放送してきたことだ。もちろん現在も、記者たちは日常活動と併行して素材を探し、1日も欠けることなく詐欺に関する情報を流している。表面に出ることを嫌いがちな被害者の証言を伝え、再現も含めて新たな手口を具体的に紹介する。「自分だけは大丈夫」と思っている人ほど危ないのが振り込め詐欺だ。

たとえ時間・人数・予算が限られていようと、「今伝えるべきこと」を発信し続ける地域メディア。これは今後のローカル局のあり方に大きな影響を与える取り組みでもある。

●「未来へ伝える~私の3.11」手記募集(IBC岩手放送)

時間の経過と共に、被災者の様子や復興の進捗状況が中央のメディアで報じられる機会は明らかに減少している。しかし、地元の放送局は住民との併走をずっと続けてきた。

岩手放送が行っているのは、「あの日」の記憶を共有し、次の世代にも伝えていこうとする取り組みだ。ラジオを通じて手記を募集し、放送で読み上げ、CD付きの書籍として出版した。そこには被災者の“本音”と“事実”が記録されている。また環境と心の変化も見て取れる。

それを可能にしているのは、マスメディアでありながら同時にパーソナルなメディアでもある、ラジオ独特の力だ。朗読を担当している大塚富夫アナウンサーの人柄とも相まって、ヒューマンな温もりのあるキャンペーンとなっている。

●ヒューマニズムに訴え続けた20年~日中韓共同制作による相互理解~(福井テレビ)

ローカル局と海外の放送局との共同制作は決して珍しくない。だが、それを20年間続けているケースは稀有であり、おそらく大変な努力が必要だったはずだ。しかも、近年、国と国の間に様々な課題が発生している中国と韓国がパートナーである。

政治や外交の問題に踏み込めば困難だった共同制作を、相互理解を目標に、ヒューマンと文化に徹することで実現してきた。そこから、いわば潤滑油のような効果が生まれ、地域ならではの国際交流にまで発展している。
ビジネスという側面だけでは測れない意義や価値を大切にし、この取り組みを継続しようとする姿勢を評価したい。

●報道キャンペーン「暮らしの防災」と、防災・減災を伝える放送外活動(名古屋テレビ)

東日本大震災以来、全国の放送局が、地域の「防災・減災」に関する活動を一層強化している。その中で名古屋テレビの事績が突出しているのはなぜか。端的に言えば、「南海トラフ地震は起きる」という覚悟であり、ハラのくくり方である。

「来るかもしれない」ではなく、「かならず来る」を前提とした取り組みは、極めて具体的かつ生活密着型だ。しかも、防災・減災を暮らしに取り込む「平時の備え」の大切さを、放送だけではない多様な手法で繰り返し伝えている。地域の放送局として、真剣に地域住民の命と財産を守ろうとする決意がそこにある。

(ビジネスジャーナル 2014.10.15)

【気まぐれ写真館】 秋日和のキャンパス


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17日「金曜オトナイト」は尾木直樹先生(尾木ママ)と・・・


17日(金)夜11時半、BSジャパン「大竹まことの金曜オトナイト」。

ゲストは、教育評論家の尾木ママこと、尾木直樹先生です。

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収録当日、スタジオに向かう途中、路上で転倒してケガをなさったそうで、痛々しい絆創膏での登場に、びっくりしました。

でも、本番中は、いつものユーモアあふれるトークを展開。

さすがプロでした。

尾木先生は、ふだんテレビで拝見する、そのまんまの方です(笑)。

「宿題代行サービス」の話題などで盛り上がりましたが、偉ぶらず、気さくで、率直に意見を述べて下さいました。

ぜひ、ご覧ください。

【気まぐれ写真館】 今週の「繁田美貴アナウンサー」

あらためて、7~9月期の連続ドラマを振り返る


民放連の機関紙「民間放送」に連載している「メディア時評」。

今回は、あらためて夏ドラマを振り返ってみました。


7~9月期の連ドラを振り返る
主役を輝かせた巧みな脚本
「HERO」「昼顔」「聖女」

●「HERO」

夏クールで注目したドラマを振り返ってみたい。1本目は「HERO」(フジテレビ)である。全話の平均視聴率は21.3%。最近のドラマとしては好記録を残した。

まず主演の木村拓哉について。どんな主人公を演じても変わらない。役柄よりキムタクであること。それが“キムタク・ドラマ”と揶揄される所以だ。

確かに「安堂ロイド」の未来型ロボットも、「月の恋人」のインテリアメーカー社長も、「PRICERESS」の貧乏男も、みんなキムタクにしか見えなかった。

だが、それ自体が悪いわけではない。役柄がキムタクに合ってはいないのに、“キムタク・ドラマ”の一点だけで押し通そうとしたことに無理があった。 

しかし、「HERO」は違う。キムタク自身が「かくありたい」と思うキムタクと、久利生公平との間の誤差が少ないのだ。だから見る側も安心して「久利生≒キムタク」を楽しむことができた。

それを可能にしていたのは、主役を立てながらも群像劇としての面白さをしっかり組み込んだ福田靖の脚本だ。シリアスとコミカルのバランスも絶妙だった。また、そんな脚本を体現した役者たちにも拍手だ。

トータルで言えば、「HERO」は単なる“キムタク・ドラマ”ではなく、“優れたキムタク・ドラマ”だったのである。

●「昼顔」

2本目は同じフジテレビの「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」だ。「男性からキレイだと思われる女と、そうじゃない女の人生って、ぜんぜん違うと思います」だなんて、いいのか、そんな本当のコトを言ってと驚いた。ヒロインの一人、吉瀬美智子のセリフだ。

始まる前、「上戸彩が浮気妻?白戸家のお嬢さんにしか見えないけど」と思っていたら、“オトナの女性”担当の吉瀬がいた。

女性雑誌編集長を夫にもつ美人妻、良き母親、瀟洒な一戸建てに住むセレブ主婦でありながら、一方ではバリバリの「平日昼顔妻」。この吉瀬が、偶然知り合った普通のパート主婦・上戸を禁断の世界へと誘い込んだ。

吉瀬の相手は才能があってアクの強い画家(北村一輝)。上戸のそれは生真面目な生物教師(斉藤工)。この対比も実に巧みだった。

だが、いずれもすんなりと不倫に走るわけではない。特に上戸は自分の気持ちを疑ったり、押さえたりしながらの一進一退が続いた。

いや、そのプロセスそのものがドラマの見所だったのだ。不倫は成就してしまえば、後は継続か別離のどちらかしかない。

また前述のようなドキリとさせるセリフをはじめ、妻や夫がもつ“別の顔”の描写など、井上由美子の脚本が冴えていた。このドラマを夫婦そろって見るのは、互いのハラを探り合う事態を招くから止めたほうがいいとさえ思った。

その意味では視聴率と同様、最近話題の「録画再生率」も高かったのではないか。

●「聖女」

最後がNHKドラマ10「聖女」だ。高校生だった晴樹(永山絢斗)は、家庭教師の女子大生(広末涼子)に恋をする。勉強にも力が入り、東大に合格。だが、なぜか広末は姿を消していた。

10年後、弁護士となった永山は連続殺人事件の容疑者と化した広末と再会する。果たして彼女は、つき合った男たちを次々と殺した犯人なのかという物語だった。

一種のラブ・サスペンスであり、大森美香のオリジナル脚本がいいテンポで見る側を引っ張っていく。いや、それ以上に広末の妖しさと怪しさから目が離せないのだ。

広末が主役を務めると聞いた時、上戸彩の不倫妻とは違った意味で、一瞬「大丈夫か?」と思った。

昨年の主演ドラマ「スターマン・この星の恋」(フジテレビ)も、主演映画「桜、ふたたびの加奈子」も、はっきり言って不発だったからだ。それに最近もワイドショーを賑わせるなど、やや落ち着かないイメージがあった。

しかし、そんな広末の“崖っぷちパワー”が今回は活かされていた。ベッドシーンも堂々たるものだったし、普段からやや嘘くさい広末の微笑も、このドラマでは有効だった。悪女か聖女か、そもそもそれは逆の存在なのか。

「信用できますか?私のこと」というドラマの中のセリフも、まるで広末が視聴者に向かって自分のことを問いかけているように聞こえた。信用できるかどうかはともかく、18年前、ポケベルのCMで話題をさらった少女も、さすがにオトナの女性を演じられる年齢になったということだろう。

女優・広末涼子にとって、確実に起死回生となる1本だった。

(民間放送 2014.10.13)


豊作か!?「オトナの男」にオススメの秋ドラマ


2014年秋クールのドラマが始まった。「読書の秋」に負けない、「ドラマの秋」であって欲しい。NHKも民放も力を入れるこの季節、「オトナの男」にオススメの秋ドラマをチェックする。


●脇役たちの存在感が光る、NHK朝ドラ「マッサン」

「花子とアン」の後を受けてスタートした、NHK連続テレビ小説「マッサン」にはいくつかの特色がある。

まず、主人公が男性であることだ。女性の一代記を基本とする朝ドラでは、95年の「走らんか!」以来19年ぶりのトライとなる。

次に、「花子とアン」に続いて実在の人物であること。ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝(ドラマでは亀山政春)だ。近年、ビールや焼酎などと比べて影の薄いウイスキー。しかもサントリーではなくニッカという渋い選択が挑戦的でいい。

そして今回の目玉が、”朝ドラ史上初の外国人ヒロイン”だ。政孝がリタ夫人(ドラマではエリー)を伴って帰国したのは大正9年。夫を支えながら昭和の戦中・戦後を生きぬいた。このドラマの主人公は確かにマッサン(玉山鉄二)だが、実質的にはエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)と二人三脚の”夫婦物語”なのである。

第1週で際立っていたのが、国際結婚に断固反対するマッサンの母親(泉ピン子)の存在だった。

この設定は上手い。なぜなら、「外国人の嫁なんて」と2人の前に立ちはだかる鬼母・ピン子を置くことで、視聴者は“初の外国人ヒロイン”を応援する気持ちになるからだ。

慣れない日本で頑張ろうとする外国人妻・エリーと、同じく日本のドラマに初挑戦する女優・シャーロットが重なって見えてくる。

また、第2週からさっそく大阪へと舞台を移した「マッサン」。今度はサントリーの前身・寿屋創業者の鳥井信治郎をモデルとした、鴨居商店社長の堤真一が強烈なキャラクターで登場してきた。

玉山が演じるマッサンも、シャーロットが扮するエリーも、基本的には生真面目な性格であり、主人公としてはやや地味に見える。脇から盛り上げていく存在が必要だ。

それが1週目はマッサンの母親役・泉ピン子であり、2週目からがシリアスな役からユーモラスな役まで幅広く演じることのできる堤真一になるわけだ。

作り手側としては、堤が主役を喰うくらい思いきり暴れた方が盛り上がるという計算だろう。これも今のところ成功している。二枚目俳優・玉山が好演する二枚目半のマッサンも含め、上々の滑り出しだ。


●ヒロインを際立たせる、テレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」

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第一印象は、「本気で取りにきたなあ」である。シーズン3となる、テレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」だ。「相棒」と並ぶ二枚看板の名にかけて、果敢に勝負してくるとは思っていたが、その“エンタメぶり”は予想以上だった。

まず「国立高度医療センター」という新たな舞台を設定。手術室など施設や設備を含め、病院としてのスケールがぐんとアップした。

またそこに居並ぶ面々が豪華だ。いきなり更迭される総長に中尾彬。入れ替わる新総長は北大路欣也。そして次期総長の座を狙うのが古谷一行である。ライバル関係が続く外科部長は伊武雅刀と遠藤憲一。前シリーズで帝都医大を追われながら、しっかり西京大病院長に収まっている西田敏行も元気だ。

この面子を見ながら、「白い巨塔」(フジ)と「華麗なる一族」(TBS)と「半沢直樹」(同)がオーバーラップして苦笑いした。

男たちの権力争いは往年の東映やくざ映画のようにむき出しで、遠慮がなく、分かりやすい。すべてはヒロインのためであり、その暗闘が激しいほど、「私、失敗しないので」とマイペースで患者の命を救っていく大門未知子(米倉涼子)が際立つ仕掛けだ。まさに座長芝居である。

舞台の病院が大きくなろうと、男たちの戦いが激化しようと、大門=米倉は決して変わらない。超のつく手術好き、天才的な腕前、少しヌケた男前な性格。このブレなさ加減こそがシリーズの命だ。

【気まぐれ写真館】 紅葉、始まる

映画「猿の惑星:新世紀(ライジング)」は、ヘビーだけどエンタメ

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映画「猿の惑星:新世紀(ライジング)」を見てきました。

名作SF『猿の惑星』の前日譚(たん)『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の続編。ウイルスによって滅亡状態に陥った人類と、遺伝子の進化を経て知能や言語を得た猿たちとの対峙(たいじ)が思わぬ事態を引き起こしていく。前作に引き続き、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのアンディ・サーキスがモーションキャプチャーを駆使し、猿のリーダーとなるシーザーを熱演。その脇を『ホワイトハウス・ダウン』などのジェイソン・クラークや『裏切りのサーカス』などのゲイリー・オールドマンが固める。人類が衰退した世界の衝撃的なビジュアルに言葉を失う。


チャールトン・ヘストン主演の「猿の惑星」以来、このシリーズは全部を見てきましたが、半世紀近くを経て、ここまで奥行きのある物語世界に至るとは思いませんでした。

今回は特に「共存とか、共生とか、やはり難しいのか」と、ハラハラしながら最後まで緊張したままでした。

さらに、「武力って、持てばどうしても使いたくなるのかなあ」とか、「戦争って、こうやって起きるのかもしれない」という思いもあったりして、かなりヘビーではあります。

“寓話”と呼ぶには、その辺りが実にリアル。

映像は、お猿さんたちの表情も含めほぼ完璧で、実際そこにいるよね、です(笑)。

そんなこんなですが、読後感とか後味が悪いわけではありません。

ぐっと考えさせられることはありますが、ちゃんとエンターテインメントになっているところが、またすごい。

見るなら、やはりスクリーンがオススメです。

「世界文学」としての高橋和巳『邪宗門』

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河出文庫から、高橋和巳『邪宗門』(上・下)が出ました。

これまでも何度か文庫化されていますが、1966年に単行本として世に出した河出書房新社というところが感慨深い。

初出、つまり連載されたのが65年で、『朝日ジャーナル』だったというのも、作品とその時代を感じさせます。

解説は佐藤優さん。

この作品を、「世界文学」と呼んでいます。

現在の世界を読み解くための一冊という意味でも、確かに「世界文学」かもしれません。

わずか39歳で亡くなった高橋和巳ですが、この『邪宗門』を書いていた頃は、まだ33~34歳。

やはり天才だったのだと思います。


今週の「読んで書評を書いた本」は次の通りです。

<長め>
角田光代 『笹の舟で海をわたる』 毎日新聞社

辻 信一 『「しないこと」リストのすすめ』 ポプラ新書 

山室寛之 『巨人V9とその時代』 中高公論新社

野坂昭如 『シャボン玉日本』 毎日新聞社

五木寛之 『孤独の力』 東京書館

想田和弘 『熱狂なきファシズム』 河出書房新社 

* これらの書評は、
  発売中の『週刊新潮』(10月23日号)
  読書欄に掲載されています。

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残酷かつエロチックでオーマイガ! NHKドラマ10「さよなら私」


日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今週は、NHKドラマ10「さよなら私」を取り上げました。

このドラマ、オトナにとって、結構“見もの”です(笑)。


NHKドラマ10「さよなら私」
残酷かつエロチックでオーマイガ!
もしも自分の妻と浮気相手の女性の心が入れ替わってしまったとしたら。しかも妻と女性が高校の同級生で親友だったとしたら。そして妻が永作博美で、浮気相手が石田ゆり子だったとしたら。NHKドラマ10「さよなら私」はそんなドラマだ。

もちろん永作の夫・藤木直人は、そんなことが起きているとは夢にも思わない。だから、いつものように石田のマンションを訪れ、彼女を抱く。そんな藤木に永作はどんな思いで応えていたのか。残酷かつエロチックな場面だ。見る側(視聴者)は真相を知っているのに、当事者である登場人物は知らない。この図式は物語作りの基本のひとつだ。

2人の心が入れ替わる直前、永作に浮気を追求され、石田が反撃に出た。「してないんだってね、何年も。(微かに笑って)私とはしてるよ、会うたびにね、楽しくセックスしてる」。オーマイガ!

脚本の岡田惠和は、専業主婦・永作と独身の映画プロデューサー・石田を対比させながら、アラフォー女性の建前と本音をじわじわと炙り出す。互いの生活圏を交換した2人が今後どうなるのか、スリリングだ。

神社の石段から転げ落ちて“転換”する設定は、大林宣彦監督の名作「転校生」へのオマージュだろう。またドラマのタイトルからも同作のラストシーンでの小林聡美の声が甦ってくる。2作を見比べてみるのも一興だ。

(日刊ゲンダイ 2014.10.21)

週刊ポストで、「マッサン」の相武紗季についてコメント


朝ドラ『マッサン』
早くも「ピン子以上」のド迫力 
相武紗季の「いびり芸」が怖すぎる
もはや泉ピン子を超えたかもしれない。NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』に「いびり芸」の継承者が現われた。弱冠29歳の相武紗季である。

第13話(10月13日放送)の平均視聴率が関西地区で過去10年間の朝ドラ最高値となる26.2%をマークするなど、引き続き絶好調の『マッサン』。序盤の人気を牽引したのは主人公・亀山政春(玉山鉄二)の母・早苗を演じた泉ピン子の「嫁いびり」だった。

ヒロインのエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)をあの手この手でいじめ抜く鬼姑演技は圧巻だったが、舞台が政春の実家・広島から大阪へと移り、ピン子の登場はしばらくお休み。その穴を埋める働きをしているのが相武だ。

相武が演じるのは政春が勤める住吉酒造の社長令嬢・優子。スコットランドから帰国した政春と結婚する願いが叶わず、青い目の花嫁を逆恨みする。その演技がピン子に勝るとも劣らない。

第11話では、朝食の支度中に「ワタシ、オテツダイサセテクダサ~イ」と申し出るエリーを完全無視。無表情のまま、エリーの味噌汁にだけ醤油をドボドボと流し込んだ。

第12話では「バンゴハン、ツクラセテクダサ~イ」というエリーの申し出を一転して快諾。しかしこれが罠だった。意気揚々とスコットランドの郷土料理を作るエリーの目を盗み、誰もいない台所で一壺分の塩を鍋にぶちまけたのだ。

当然、食卓では皆が「塩辛い!」と悲鳴をあげる。すべてを悟ったエリーにキッと睨まれると、優子は悪びれもせず「仕方ないわ。材料もお台所も違うんやから」とシレッと言い放った。

いびりに気づいた父親(西川きよし)に「(エリーは)たった一人で日本に来てるんやで!」と叱責されても、優子はケロリと一蹴。

「親を捨てる人の気持ちなんてわからへん!」「いつか化けの皮が剥がれるわ。あんたは所詮、親を裏切っても何ともない親不孝もんや!」と返す刀でエリーを罵倒した。

相武のいびり芸には年季が入っている。2009年の『ブザー・ビート』(フジテレビ系)で悪女キャラに開眼すると、2013年の『おトメさん』(テレビ朝日系)では姑(黒木瞳)を裏でイジメ倒す嫁を怪演。現場で「黒木さんと本当に険悪なのでは」と噂が流れたほどだ。

上智大学教授(メディア論)で、朝ドラに詳しい碓井広義氏がいう。

「ピン子さん不在で視聴者にストレスを与える存在がいなくなっていたところにスッポリ収まった。普段の顔がかわいいからこそキッと引きつった表情にドスが利いている。今後もことあるごとに政春とエリーの関係に波風を立てようとするはず。ほんわかした朝ドラをピリッとさせる最高のスパイスになっている」

政春と優子が結婚していたら、ピン子と相武の壮絶な嫁姑バトルが見られたのに……。

(週刊ポスト2014年10月31日号)


・・・・最近の物語進行では、相武さん演じる優子は、すっかり“いいひと”になってしまったようです。

相武スマイルが見られるのは嬉しいが、“いびり芸”が後退してしまうのは惜しいなあ(笑)。



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