1月ドラマの意外なキーワード
「東大卒」に「ダメ男」
今年1月からスタートしたテレビドラマは現在、第3話から第4話に入っている。今期のドラマには、共通する2つのキーワードがある。
「ダメ男」と「東大卒」だ。
ヒロインを際立たせる「ダメ男」
「ダメ男」は、次の各ドラマに共通している。
『残念な夫。』(フジテレビ系、毎週水曜22時~)
『○○妻』(日本テレビ系、毎週水曜22時~)
『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ系、毎週月曜21時~)
『問題のあるレストラン』(フジテレビ系、毎週木曜22時~)
『流星ワゴン』(TBS系、毎週日曜21時~)。
たとえば『残念な夫。』では、自分は育児に非協力的なのに「夫としては80点」と自信を持つ、文字通り残念な夫が描かれている。勘違いで情けないダメ男を演じているのが、イケメンの玉木宏というのもおもしろい。
『○○妻』でニュースキャスター役の東山紀之は、完璧な妻(柴咲コウ)がいないと服のコーディネートがダメなばかりか、ハンコの位置すらわからない。仕事一筋だから、ま、いいか…。
35歳になってもニートで、一度も働いた経験がないくせに自分を「高等遊民」と言い張るダメ男(長谷川博己)が登場するのは『デート』。
一方、セクハラやパワハラをしても何がいけないのか気づかず、自分のことしか考えない男を描く『問題のあるレストラン』は、社会問題を追及するような秀作だ。
これら“ダメな男”が、なぜ今期多く登場しているのか。上智大学文学部の碓井広義教授(メディア論)は、こう分析する。
「いま女性が元気な時代で、それを象徴しているのだと思います。言ってみれば、ヒロインを際立たせる役割を担っている。ダメ男をも飲み込んでしまう女性の元気さが、より強調されているのでしょう」
女性の方が充足していなくて、ある意味、野心があるということなのだろうか。
明確なキャラ設定ができる「東大」
もう一つのキーワードは「東大卒」。
『銭の戦争』(フジテレビ系、毎週火曜22時~)で、主演の草なぎ剛が演じる富生は東大卒の元エリート証券マンという設定。原作は韓国の漫画だ。
二階堂ふみが『問題のあるレストラン』で演じる新田もまた東大卒だし、生田斗真と小栗旬の共演で話題を呼んでいる『ウロボロス~この愛こそ、正義。』(TBS系、毎週金曜22時~)で、女性刑事・日比野(上野樹里)もまた東大卒だ。
初回視聴率14.8%と好調な滑り出しを見せた『デート』で、杏が演じる依子はなんと東大大学院を卒業後、内閣府の研究所で働く国家公務員である。そのエリートが、初対面の男性に勃起力や性的な嗜好を聞くなど、斬新なドラマになっている。
やはり東大出身者は、勉強はできるがやや変わり者なのか?
「明確なキャラクター設定がされている、ということでしょう。勉学はできるけれども、どこか変で少し浮いている奴。それを説明なしにドラマに組み込んでいけるのです。いわば、記号としての東大卒でしょうね。実際の東大卒は千差万別なんですが」(前出・碓井教授)
登場人物のバックグラウンドが「東大卒」というだけで、ある程度認識できるようなキャラ設定ということなのだ。
今クールのドラマは「ダメ男」と「東大卒」をチェックしながら今後の展開を見守っていくと、新たな発見があるかもしれない。(文:青柳雄介)
(T-SITE 2015.02.01)