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コメントした、アサヒ芸能「宮沢りえ」記事全文

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「ヨルタモリ」でバラエティ初レギュラーを務める宮沢りえが好評だ。下ネタも、愚痴も、軽妙に受け答える和服姿の四十路色香は、日曜夜の憂鬱な気持ちを癒やしてくれる。紆余曲折の人生から、開眼した新たな魅力。女優の枠にはおさまらない脱皮した「スター」の素顔が今、実名証言で明かされる。

昨年10月19日に放送が始まった「ヨルタモリ」(フジテレビ系)で女性MCを務める宮沢りえ(42)。女優一筋の宮沢がバラエティ初レギュラーに踏み切った理由をフジテレビ関係者が明かす。

「以前から、タモリさんと宮沢さんは都内の同じバーに行っています。遭遇すると、タモリさんが『今からじっと2分間、見つめていいですか?』と冗談を言うほどの仲です。企画段階で、タモリさんがラブコールを送り、出演が決まったんです」

日曜夜11時台という深夜帯の放送ながら2桁台の視聴率をマークする回があり、好調を維持している「ヨルタモリ」。宮沢は、東京下町の湯島のバーのママ役という設定だが、毎回着物姿で四十路の色香を振りまいている。

メディア論を専門にする上智大学の碓井広義教授がその魅力を語る。

「まだ10代の時にCMの撮影現場で出会ったことがあります。宮沢さんがスタジオに入ると現場が急にパッと明るく華やいだのを覚えています。『ヨルタモリ』を見ていても、それを感じますよね。しかも、その華やかさがまったくもってくすんでいない。それどころか、ますます大人の魅力を増し、チャーミングになっている。稀有な女優さんですよね」

番組でタモリは岩手県在住のジャズ喫茶のマスター「ヨシワラさん」に扮する。ややなまった「ヨシワラさん」と「りえママ」との軽妙洒脱なやりとり。この新たな一面が人気となり再ブレイクしているのだ。

「いい意味で女優然としていない。42歳の素の自分をさらけ出していますよね。肩肘張らない自然体の姿は最大のチャーミングポイントです」(碓井氏)

3月1日の放送回では、「ヨシワラさん」が、

「何で女性って下ネタ言わないのかね」

と、つぶやくと宮沢は、

「いや。言いますよ。私、下ネタ好き。だって罪がないじゃない。誰も傷つけないし」

と「下ネタ好き」であることを告白している。

大物ころがしも堂に入ったものだ。

4月26日の回では、とんねるずの石橋貴明(53)がゲスト出演。93年、当時関脇だった貴花田との婚約発表前日に宮沢に電話したが、つながらなかったことを悔やんだ。そして婚約破棄の一件をネタにしたのだ。

「こっちの“貴”にしておけばよかったのに」

宮沢は過去の傷を笑顔で返すのだった。

「電話がもっと早かったら、私も婚約していなかったかも」

また、5月31日には松本幸四郎(72)がゲストで登場。珍しいバラエティ出演の理由をこう明かした。

「トークは苦手だけど、りえちゃんの頼みなら」

「世界の北野」ビートたけし(68)も、宮沢にラブコールを送る一人だ。

今年2月22日に行われた「第24回東京スポーツ映画大賞」の授賞式で、審査委員長を務めたたけしは、

「アイドル時代があって、いろいろあって脱皮していった。普通はアイドルの服を着たまま大きくなっていくが、どんどん脱いで脱皮した」

と宮沢を大絶賛した。

「ヨルタモリ」にはこれまで井上陽水、黒柳徹子など超大物が出演している。

「若手から大物まで、幅広い世代に愛されている。先日も沢尻エリカさんが出演したのですが、終始上機嫌でした。宮沢さん効果で『ヨルタモリ』に出たいと、みずから出演を売り込んでくるタレントさんもいます。明石家さんまさんもその一人」(フジテレビ関係者)

タモリとはカメラが回っていないところでも料理の話で盛り上がり、公私に渡る関係は良好だという。

(週刊アサヒ芸能 2015年 6月18日号)

全国広報コンクール「映像」部門の審査結果と講評

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全国広報コンクールの審査結果が、月刊「広報」に掲載されました。

今年も、日本演劇協会理事の嶋田親一先生と共に、「映像」部門の審査委員を務めさせていただきました。

受賞作について書いた講評は、以下の通りです。

受賞した自治体の皆さん、おめでとうございます!


平成27年全国広報コンクール「映像」部門

<審査を終えて>
新たな技術を導入した、広報映像の新たな展開
近年、広報映像の発信方法が多様化している。番組やビデオの形だけでなく、ネットの活用が当たり前になってきた。そして今年、さらに新たな技術の応用が加わった。拡張現実、いわゆるAR(Augmented Reality)技術だ。

すでに馴染みのある仮想現実、ヴァーチャル・リアリティ(VR)は、コンピュータによる五感への働きかけによって、人工的な現実感をつくり出す。

一方、拡張現実(AR)は、現実のコンテンツに、現実にはない情報を付加することでインパクトを与える。いわば現実の一部を改変するわけで、具体的には目の前にある現実空間に、デジタル情報を重ね合わせて表示するのだ。

今年入選した埼玉県三芳町の例では、広報誌の写真や絵に、スマホやタブレット端末をかざすと、映像と音声が流れてくる。しかも、AR技術を活用したその映像は、動画による「手話講座」だ。

また同町では、「広報みよし」の印刷以外、つまり動画撮影や編集をはじめARにかかわるすべての作業(取材、写真撮影、デザインレイアウトなど)を、外部委託ではなく、職員が行っている。それにより、AR導入費、運営費用は0円だという。

もちろん、他の市町村がそのまま踏襲することは出来ないかもしれない。だが、すでにこうした先進的な広報の取り組みが行われていることは、しっかりと認識しておきたい。


<受賞作講評>
■特選  
 新潟県燕市 「もっと!ギュッと! つばめっ子ニュース」

まず、「子ども版広報」というトライに好感が持てた。複数のチームが、広報の企画から取材、執筆、レイアウトまでを行う取り組みは、子どもたちが自分たちの暮らす地域をより知るために大変有効だ。またメディアリテラシー教育としても有意義である。しかも出来上がった広報が、いずれも素晴らしい。番組全体の完成度も高く、審査会では、「志」を感じさせる自主制作として高く評価された。

■入選1席  
 広島県東広島市 「ひとくふう発見伝 元就。東広島外伝~東広島、イマドキの教育事情」

最近、連続で選ばれている「ひとくふう発見伝」。キャラクターも上手に使いながら、楽しく、分かりやすく伝えようとする努力の成果だ。今回の「一校一和文化学習」に関しても、飽きさせない見せ方、構成を工夫している。教育は教室の中だけで行われるものではない。見事な組曲「西条」はもちろん、神楽の伝承といった地道な取り組みが、いかに重要なことかを痛感。番組には一本筋が通った迫力がある。

■入選2席  
 埼玉県三芳町 「日本手話で広げよう心の輪 ARで学ぶ 日本手話」

AR(Augmented Reality)という新たな技術を、他の地域に先駆けて広報に活用している。広報誌にスマートフォンをかざすことで動画がスタートするのだ。その動画が、「今月覚えてほしい日本手話」という企画である点も秀逸。紙媒体での図解などでは伝えきれないニュアンスも、動画なら、より分かりやすく伝えることができる。全体が軽快で明るく、楽しい映像であることも評価された。

■入選3席  
 北海道愛別町 「未来への約束~愛ある花火と君の椅子~」

「ハッピーボーン」という取り組みを1990年から続け、これまでに3000人の赤ちゃん誕生を祝ってきた愛別町。花火、地元の材料を使った「君の椅子」、お米などのプレゼントが微笑ましい。町があって人がいるのではなく、人がいてこそ町がある。だからこそ子供は“みんなの宝”であり、その意識を、あらためて共有するかのような内容だ。「開拓120周年」にふさわしい映像作品になっていた。

■入選  
 茨城県石岡市 「石岡めぐり」 

ユーチューブで見ることのできる、約2分半の作品だ。地元の四季を軸とした美しい映像、丁寧な編集、ナレーションなし、静かなBGMといった総合力で、短いながらも町の雰囲気が十分に伝わってくる。いわばプロモーションビデオとして、よく出来ていた。一方、短いだけに、見せたいものだけを並べている、イメージだけを植え付けようとしている、やや独善的ではないか、という指摘もあったことを明記しておく。

■入選  
 富山県立山町 「立山かんじき-雪山に息づく伝統の技-」

伝統の技としての「かんじき作り」を、実に丹念に見せていた。この作品自体が貴重な記録であり、伝統文化の継承として意義のある取り組みだ。また、ただ一人となった職人のことを思うと、広報側のこうした姿勢が、今こそ必要なものであると分かる。ただし、この内容で30分を超す長さは、見る側が途中でダレてしまう恐れがある。もう少し凝縮してもよかったのではないか。

■入選 
 京都府京丹波町 「家族の愛で はぐくむ命」

自主制作番組として、3年連続の入選となる。基本的に密着ドキュメンタリーというスタイルは今回も変わらない。ある“子育て家族”が描かれている。取材者と取材対象の距離感も適切だ。支援イベントに参加する様子や自宅での日常は、見る側が家族や命について考えるきっかけとなる。とはいえ終盤になると、やや冗長な印象は拭えない。30分の番組枠ということで仕方ないが、刈り込めば、もっと良い作品になる。

■入選 
 兵庫県西宮市 「まるごと市政「本ってすごい 本ってたのしい」~西宮市立図書館の取り組み~」

今、全国各地の公立図書館が注目されている。単に本を所蔵し、閲覧や貸し出しだけを行っていた時代とは異なり、オリジナルな取り組みが展開されているからだ。西宮市の出張ブックトークやビブリオバトルもその一つと言える。映像では、コント風の説明も入れるなどの工夫がなされ、望遠レンズを使ったインタビューも効果的。何より、見ていると、図書館に行きたくなることが最大の功績だ。

■入選 
 福岡県北九州市 「開け!キタキュウ人図鑑~創業75周年 小倉昭和館の3代目 樋口智巳さん」

「自分たちの地元に、こんな人がいるのか」という発見、再発見が楽しい番組だ。今回は、創業75周年を迎えた映画館の3代目となる女性館主。どんなことをしているのか。そしてどんな人なのか。人間像も鮮明で、人物ドキュメンタリーとして優れている。しかも、これが2分半の長さであることに驚く。映像も編集もしっかりしており、見ごたえがあった。短い作品ならではのインパクトがあり、自治体の姿も見えてくる。

(月刊「広報」 2015年6月号)

第52回ギャラクシー賞「CM部門」受賞作を解説

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ビジネスジャーナルに連載しているメディア時評、碓井広義「ひとことでは言えない」。

今回は、選奨委員を務めているギャラクシー賞「CM部門」の受賞作について書きました。


何が綾野剛を“励ました”のか!?
放送批評懇談会が主催する「ギャラクシー賞」。毎年4月1日から翌年3月31日を審査対象期間として、年間の賞を選び出している。今月2日に第52回ギャラクシー賞の贈賞式が行われ、テレビ、ラジオ、CM、報道活動の各部門の大賞、優秀賞などが発表された。

筆者はそのCM部門の選奨委員を務めている。毎月、CM委員会が開催され、委員たちが注目するCMを挙げ、全員で意見交換を行う。これを1年間続け、最終的に「今年の1本」を決めていく。全体として膨大な量のCMの中から受賞作を選ぶことは、大変で面白く、また難しくて楽しい作業だ。

今年もまた、時代や社会の実相を映し出しながら、コマーシャルとしての役割もしっかり果たした秀作にスポットが当たった。


<大賞>

●東海テレビ放送 公共キャンペーン・スポット「震災から3年~伝えつづける~」

東日本大震災を伝え続けているのは地元局だけではない。被災地のメディアではないからこそ、何を、いかに伝えるかに悩みつつ、でも決して手を止めていない。

2011年3月11日に起きた大災害。だが、時間の経過と共に、被災地以外に住む人たちの関心や記憶が薄れてきている。その一方で、「忘れてはいけない」という思いから、今も被災者への取材を続ける記者たちがいる。もちろん、それ自体はジャーナリズムの使命として、当たり前に見えるかもしれない。

しかし、実は記者たちも、被災者に対する微妙な取材に、迷ったり悩んだりしている。そんな葛藤する姿を伝えることで、地に足のついた、リアルな公共キャンペーンとなったのが本作だ。「記者は、忘れかけていた。取材される側の気持ちを」というコピーは、視聴者の気持ちも揺り動かした。


<優秀賞>

●インテリジェンス DODA シリーズ「チャップリン×綾野剛篇」「キング牧師×綾野剛篇」

その演説は映画「独裁者」の終盤に置かれている。約3分半のワンカットだ。 ファシズムの国の独裁者と間違われた床屋(チャップリン)が、兵士たちに向かって呼びかける。「君たちは機械ではない。家畜でもない。人間なんだ!」と。

CMには現在の仕事と将来に迷いを抱えた青年(綾野剛)が登場する。鏡に映る自分を見つめた時、チャップリンの声が彼を励ます。 「君たちには力がある。人生を自由で美しく、素晴らしい冒険に変える力が!」。

「キング牧師」編も、「友よ。今こそ、夢を見よう」で始まるメッセージが強烈なインパクトで迫ってくる。姿こそ見えないが、肉声の背後にある彼らの思想と行動、つまり生き方を想起するからだ。


●TOTO NEOREST ネオレスト「菌の親子篇」

悩める人々に福音をもたらした世紀の発明品、温水洗浄トイレ。1982年の登場以来、ひたすら進化を続け、新製品では見えない汚れや菌を分解・除菌し、その発生さえ抑制するという。

その性能を伝えるために、トイレに生息する「菌の親子」、ビッグベンとリトルベンを登場させた設定が秀逸だ。画面の基調となる白に、2人の黒いコスチュームが美しいコントラストを見せる。

また何より、除菌水の威力を嘆く息子菌(寺田心)がカワイイ。リトルベンの「悲しくなるほど清潔だね」のせりふに、つい微笑んでしまう。美しさと愛らしさ、そしてユーモアの勝利である。


●日清食品ホールディングス カップヌードル シリーズ「現代のサムライ篇」「壁ドン篇」

このシリーズ、ダチョウ倶楽部が出演した「本音と建前編」もそうだったが、外国人の目で見たニッポンが新鮮で面白い。

マンガやアイドルに入れ込む日本の若者たちの姿を見せることで、日本人の創造性やオリジナリティを再認識させてくれる。特に、サムライやフジヤマといった、日本のイメージのステレオタイプを逆手にとった発想と表現が見事だ。

「この国の若者は、アイドルとヌードルが好きです」のナレーションも、エネルギッシュな音楽も、ピタリと決まっている。


<選奨>

●NTTドコモ スマートライフ「親子のキャッチボール篇」

●住友生命保険 企業「dear my family2015」

●東京ガス 企業「家族の絆 母とは」

●トヨタマーケティングジャパン TOYOTA NEXT ONE シリーズ「THE WORLD IS ONE.」

●パナソニック エボルタ「エボルタ廃線1日復活チャレンジ」

●フルスロットルズ ドレスマックス「奥さまは花嫁」

●三井不動産リアルティ 三井のリハウス「みんなの声鉛筆」シリーズ「もう一度都心へ」「同居?or近居?」「友達と住まい」

●ユニフルーティージャパン チキータバナナ「BANANART ANIMATION」

●琉球放送 歩くーぽん シリーズ「フォアボール篇」「外野フライ篇」「1塁にて篇」

(ビジネスジャーナル 2015.06.22)

碓井広義ブログ「550万アクセス」に感謝です!

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8月の公開が楽しみな、映画『テッド2』

おかげさまで、昨日、このブログの「総アクセス数」が、550万を超えました。

日々、たくさんの皆さんに見ていただいていることに、あらためて感謝いたします。

本当に、ありがとうございます!

これからも、テレビを中心としたメディアについて、本や活字について、また映画や映像についてなど、あれやこれやと書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします!

見応えあり、桂米朝師匠のドキュメンタリー

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日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、桂米朝師匠のドキュメンタリーを取り上げました。


ETV特集
「洒落(しゃれ)が生命(いのち)
~桂米朝 「上方落語」復活の軌跡~」

「落語は現世肯定の芸であります」
の言葉が印象に残った
今年3月、桂米朝が亡くなった。上方落語だけでなく、落語という文化そのものを支え、発展させてきた功労者だ。この番組は、師匠の歩みを辿る人物ドキュメントであると同時に、上方落語への案内状でもある。

神主の息子に生まれがら、子供の頃からの落語好き。昭和20年に19歳で召集されるが、病気で入院。傷病兵たちの前で語った一席で、「笑いだけでなく、生きる力を与える」落語の凄さを再認識する。戦後、桂米團治に弟子入りしてからの活躍は言うまでもない。

また、師匠が続けてきた地道な取り組みに驚く。先輩の落語家たちを訪ね、古い埋もれた噺を掘り起こしていったのだ。

たとえば「天狗さし」。天狗を捕まえ、すき焼きならぬ「天狗すき」を作ろうという話だ。その中に登場する、「念仏ざし」という言葉の意味を探し続けるエピソードに、その人柄がよく表れていた。

番組で師匠について語る人たちも、大西信行、矢野誠一、筒井康隆、山折哲雄など錚々たる顔ぶれだ。

中でも矢野の“東京進出”の回想は貴重。大ネタ「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」に度肝を抜かれた、41歳の立川談志の姿が浮かんでくる。

噺の発掘だけでなく、新しい話芸を作ること、後進を育てることにも努めた桂米朝。「落語は現世肯定の芸であります」の言葉が印象に残った。

(日刊ゲンダイ 2015.06.23)

【気まぐれ写真館】 梅雨の青空 2015.06.24

「天皇の料理番」と「Dr.倫太郎」の差異とは!?

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発売中の「週刊現代」最新号に、今期ドラマ2本に関する記事が掲載されました。

この中で、コメントしています。


記事タイトル:
ドラマ視聴率に異変あり
「天皇の料理番」がウケて、「Dr.倫太郎」がコケた訳

2本のドラマについて、私のコメント部分は、以下の通りです。

記事全体は、本誌をご覧ください。


++++++++++++++++

『Dr.倫太郎』は『ドクターX』のような一話完結のわかりやすさがなかったと指摘する声が多い。

上智大学教授でメディア論を専門とする碓井広義氏が言う。

「『ドクターX』の主人公・大門未知子(米倉涼子)は外科医でした。だから毎回、難手術を成功させることによって、見せ場も作りやすかった。一方で、今回堺さんが演じた精神科医の治療は長丁場で、結果がすぐには出ないもの。患者さんの話をじっくり聞き続けるシーンが多くなり、ドラマチックな展開にするのが難しく、カタルシスもなかった」

++++++++++++++++

どうすれば数字が取れるのか、テレビの作り手たちは正解を見失っている。そんな中で今クール唯一、高評価を得たドラマがある。佐藤健主演の『天皇の料理番』(TBS系)だ。直近の視聴率は15・3%と後半に入ってどんどん数字を伸ばしている。前評判はそれほど高くなかったドラマが、実際に放送を見て、評価を上げることがある。

なぜ、このドラマはウケたのだろうか。『Dr.倫太郎』と比べて「題材が圧倒的に面白い」という声が多数、挙がった。

「主演の佐藤健さんが演じる篤蔵は、天皇陛下の料理番なので、立派で畏れ多い人物なのかと思いきや、破天荒なキャラクター。決して品行方正ではない。でもそれがかえって身近に感じます。伸び伸びとした佐藤さんの演技は、観ていて気持ちがいい」(前出の碓井氏)

脇を固める俳優陣も篤蔵の妻を演じた黒木華を筆頭に、小林薫や武田鉄也、杉本哲太、美保純など、渋い役者がうまく噛み合っている。

(週刊現代 2015.07.04号)

TBS「ドラマ枠」削減の行方

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日刊ゲンダイで、TBSの「ドラマ枠」削減についてコメントしました。

つぶすのは簡単かもしれませんが、復活させるのは至難の業となってしまうのがドラマです。


記事タイトル:
ついに伝統の「木21時」枠も店じまい
ドラマのTBS 瓦解寸前

・TBSは、この秋、「木曜21時」枠を、ドラマからバラエティーに変更するという。

・「水戸黄門」などを流していた「月曜20時」枠に続いく、ドラマ撤退だ。

・消滅の決め手は、直近3作となる「ヤメゴク」「美しき罠」「夫のカノジョ」の連続的低視聴率。


・・・・以下、私のコメント部分です。

〝木9〟は71年10月以降、良質な作品を量産してきた。

上智大教授(メディア論)の碓井広義氏が「ドラマのTBSを支えた伝統的な枠のひとつ」と話すように、代表格は「3年B組金八先生」「渡る世間は鬼ばかり」「HOTEL」など。

いずれも長年にわたってお茶の間の笑いと涙を誘い、学園もの、家族ものに金字塔を打ち立ててきた枠にもかかわらず、放棄するとは一体、TBSはどうしたのか。

「直近3作品を見る限り、企画そのものの失敗といわざるを得ない。いずれも共感できる登場人物がひとりもおらず、流行りの事象や話題を取り上げただけ、目先の受け狙いに終始した印象で、ターゲットとする視聴者像が見えてきませんでした。基本的に、ヒットするドラマは物語自体が文句なしに面白く、世代や性別を問わず支持されます。同枠の制作陣は果たして、自分たちが本当に作りたい、面白いと思う作品を手がけていたのか。たしかにドラマ冬の時代と久しくいわれ、厳しい状況ではありますが、視聴率低迷=ドラマ全体が衰退していると捉えるのは早計。視聴者の目が肥え、駄作が淘汰されるようになったのです。今後、制作のチャンスが減ることでTBSのドラマ制作の力が痩せ細らないことを願うばかりです」(前出=碓井氏)

深夜帯にドラマ枠を新設するというが、夜更けとプライムは別物だ。「ドラマのTBS」という看板はなかなか元に戻らない。

(日刊ゲンダイ 2015.06.25)

【気まぐれ写真館】 HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2015.06.26

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「イチオシ!祭り」のハッピを試着


MCの国井アナ、ヒロさん


ゲストは野球解説者の建山義紀さん


オクラホマ藤尾さん


今週の「国井美佐アナウンサー」

【気まぐれ写真館】 HTB「イチオシ!モーニング」 2015.06.27

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「イチオシ!モーニング」の面々

MCの愛里さんと依田アナ


野球解説の岩本さん


ファイターズガールの安念さん


岩本さんと五十幡アナ


今週の「木村愛里さん」

【気まぐれ写真館】 札幌「北海道庁旧本庁舎」前  2015.06.27

【気まぐれ写真館】 いつもの千歳市「柳ばし」で  2015.06.27

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今回は「特製 トマトの煮込みハンバーグ定食」

【気まぐれ写真館】 車窓の夕景  2015.06.27

“平成の小津映画”と呼びたい秀作『海街diary』

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ビジネスジャーナルに連載している、碓井広義「ひとことでは言えない」。

今回は、映画『海街diary』について書きました。


綾瀬はるかと広瀬すず、歴史に残る“美しさ”
映画『海街diary』にあふれる幸福感
テレビドキュメンタリーの優れた作り手だった是枝裕和が、『幻の光』で映画監督デビューしたのは1995年のことだ。あれから20年。そのキャリアには、『ワンダフルライフ』や『誰も知らない』など評価の高い作品が並ぶが、公開中の新作『海街diary』もまた是枝監督の代表作の一つになるだろう。

見終わって最初の感想は、「ずっと見続けていたい」だった。何より、この姉妹たちの日常をもっと見ていたかった。物語としての1年という時間経過と共に、彼女たちの中で何かが変わっていく。その繊細な移り変わりに立ち会う幸福感が、終了後も尾を引いていたのだ。

三姉妹が鎌倉にある古い家で暮している。しっかり者の長女・幸(綾瀬はるか)、縛られない性格の次女・佳乃(長澤まさみ)、のんびりした三女・千佳(夏帆)だ。父は15年前に家を出ていたし、母は再婚している。育ててくれた祖母もまた亡くなってしまった。

突然、父の訃報が届く。葬儀が行われた山形の小さな町で、3人は腹違いの妹・すず(広瀬すず)と出会う。病気になった父の世話をしてくれた、中学生のすず。実母は亡くなり、継母との関係はしっくりいっていない。三姉妹を「父が好きだった場所」に案内し、4人で風景を眺めるシーンが印象的だ。

駅での別れ際、幸が突然、「すずちゃん、鎌倉に来ない? 一緒に暮らさない? 4人で」と声をかける。このひと言で、物語が大きく動き出すのだ。是枝監督は、あるインタビューで「これは捨て子が捨て子を引き取る話だなと思った」と語っている。

捨て子とは強烈な言葉だが、実際、姉妹たちは父にも母にも捨てられたことになる。鎌倉の古くて大きな家で暮らすのは、欠けた人のいる家族、不在者のいる家族だったのだ。長女の幸は、年齢的なこともあり、不在の父や母へのわだかまりが強い。だが、それもまた、すずを受け容れることで変わっていくのだ。

思えば、小津安二郎監督の映画でも、何度か“不在の人”が描かれる。『父ありき』や『晩春』は母親が、『秋日和』では父親が不在だった。不在、つまり失われていることが、そのまま不幸ではないと感じさせるという意味で、小津作品と本作は重なるのかもしれない。

加えて、この映画における綾瀬はるかの佇まいが、小津作品で原節子が演じてきた女性たちを思わせる。凛とした美しさ。強さと優しさ。さらに、どこか自分を無理に律している切なさも似ている。本作に関してだけでも、是枝監督が平成の小津安二郎なら、綾瀬は平成の原節子である。

そしてもう一人、特筆すべきは広瀬すずだ。名前と役名が同じであることも偶然ではないと思わせる。それくらい作中のすずは瑞々しい。だが、成長していく少女ほど儚いものはない。だからこそ、今という時間にしか映しこめない輝きがここにあるのだ。桜並木のトンネルを自転車で走り抜けていくシーンなど、長く記憶に残る名場面と言うしかない。

すでにドラマやCMでたくさんのスポットを浴びている広瀬だが、この映画への起用はそれ以前に決まったことだ。是枝監督の慧眼、恐るべし。彼女を発見したことで、この作品の制作を決めたのではないかと想像したくなるほど、その存在感は際立っている。

この映画には驚愕の事件も、泣かせる難病も、気恥ずかしくなるような大恋愛もない。しかし、不在者をも包み込みながら、自分たちの居場所で積み重ねていく日常の豊かさを、静かなるドラマとして描き切った秀作である。是枝監督と四姉妹に拍手を送りたい。

(ビジネスジャーナル 2015.06.26)

自民党議員「マスコミを懲らしめる」発言と新聞

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6月27日(土)の朝刊

「そういえば・・・」という感じで思い返すことって、ありますよね。

で、そういえば、先週27日(土)の朝、新聞各紙をパッと見た時のことです。

前日の26日に、自民党の若手勉強会なる場所で、出席者たちから、報道機関に圧力をかけるような発言がありました。

「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけてほしい」とか。

これが国会議員の発言ですからね、何とも情けない。

安倍政権のメディア・コントロールへの執念は相当なものですが、今回は、それをあからさまに反映させた事例というか、馬脚を現した出来事というか。

とにかく、前日にそんなことがあっての、27日の朝刊です。

朝日、毎日は、この件が一面トップでした。

「マスコミを懲らしめる」って話ですから、いわば当事者でもあり、当然といえば当然です。

ところが、読売新聞の一面には、どこを探しても、これに関する記事がありません。

一応、社説では取り上げていましたが、関連の記事が、ない。

これは、「そこまでするか」なのか、「そこまでしない(書かない)のか」なのかは分かりませんが、ちょっとビックリでした。

極端なことを言えば、読売新聞だけを読んでいる人にとっては、この“異論封じ”の如き発言も、無かったことになってしまう。

同時に、「マスコミを懲らしめる」や経団連ウンヌンは、テレビ、特に民放が随分ナメられているわけですが、“書かない”新聞もまた同様ではないかと思いました。

つい3紙を並べて、写真を撮ってみた次第です。

「元少年A」手記の出版に、大義名分はあるか?

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産経新聞に、神戸児童殺傷「元少年A」手記の出版に関する、特集記事が掲載されました。

この記事の中で、解説しています。



神戸児童殺傷「元少年A」手記
「息子は2度殺された」
土師淳君の父「遺族人権を侵害」
平成9年に起きた神戸市須磨区の連続児童殺傷事件の加害男性(32)が「元少年A」の作者名で出した手記 「絶歌」。

被害者の土師淳君=当時(11)=の父、守さん(59)が産経新聞の取材に応じ、 「今、改めて事件の内容を多くの人に伝える必要がどこにあるのか。 私たち遺族の心も傷つき、『息子は2度殺された』という思いだ」などと心情を話した。

加害男性からは、事件後毎年手紙が送られてきており、事件から18年となる今年5月にも、手紙が届いたばかりだった。

「手紙を読むことはつらい。それでも、私たちは子供に対する義務だと思い、手紙を読み、『事件のときのことをもっと知りたい』と声をあげてきた」

しかし守さんの思いは裏切られた。加害男性からも、出版社からも、何の連絡もないまま、突然手記が出版された。

「事件の詳しい状況や加害者の心境は遺族だけに伝えればいいこと。本を読むことで、事件を知らなかった多くの人が、 私の子供が残酷な殺され方をした事件のことを知る。私たちの心は傷つき、二次被害、三次被害を受ける」

「絶歌」を出版した太田出版(東京)は、発売後の17日にホームページ上で見解を発表、「少年犯罪を考える上で大きな 社会的意味があると考えた」と主張するが、守さんは「これほど特異な事件の内容を社会に知らせても、 普遍的な意味はない。売ることだけを考えている」と反論。抗議書を出し、回収を求めている。

事件後、守さんは「全国犯罪被害者の会(あすの会)」の活動などを通じて、少年犯罪の情報開示などを求めてきた。 しかし今回、加害男性が「元少年A」の作者名で本を出したことに、「32歳の責任ある成人男性が、 少年法の陰に隠れて匿名で本を出し、遺族を傷つける。卑怯(ひきょう)だ」とも憤る。

加害男性は医療少年院に約6年あまり入所し、その後更生したとして退院した。弁護士らのサポートチームが 支援を続けてきた-とされていたが、「絶歌」では、17年に支援から離れて暮らすようになった-との内容が 書かれている。こうした情報は手紙にはなかったという。守さんの不信感は募るばかりだ。「事件直後の心境に戻った。 本当に更生しているのなら、こういう本を書けるはずがない。更生にかかわった人たちの認識も甘い」と話す。

加害男性側は、関係者を通じて「絶歌」の出版後に改めて手紙と本を守さんに渡そうとしたが、 守さんは受け取らなかった。もとより「本を読む気はまったくない」という。

出版の自由、表現の自由との間での、取り扱いの難しさを問う声もあるが、守さんは「自由といっても、何をしてもいいということではないはず。被害者や遺族の人権は侵害されている。加害者の出版の権利を守るのではなく、被害者の人権を守ってほしい」と訴えている。

今回、地元の兵庫県の公立図書館が本を購入しなかったり、書店が取り扱いをしなかったりと、遺族へ配慮する動きも出始めている。兵庫県明石市の泉房穂市長は、市内の書店に配慮を求めた。こうした動きを守さんは「ありがたい」と評価しており、「一刻も早く回収してほしい。また犯罪の加害者が、自分の犯した犯罪のことを手記にして出版する、という行動も規制してほしい」と話している。

書店・図書館 対応分かれる

「絶歌」の取り扱いをめぐり、書店や公共図書館の対応が割れている。

関東を中心に展開する啓文堂書店(東京)は、当初から販売を自粛し、注文も受け付けていない。同店には100件を超すメールや電話が寄せられたが、対応を支持する声が圧倒的多数だったという。

大手書店チェーンの丸善ジュンク堂書店(東京)は一部店舗を除き販売を続けている。「本社で自主規制はしない。買うか買わないかはお客さんが判断すること」。ネット書店アマゾンでは「絶歌」は書籍総合の売れ筋ランキング1位(28日現在)。だが感想欄には「更生しているというのなら実名で自費出版すべきだ」といった非難も寄せられている。

一方、香川県まんのう町立図書館では現段階で購入を見合わせている。同館では「残酷な描写があることや被害者遺族の精神的苦痛などを考え合わせると、限られた予算の中での優先順位は限りなく低い」と説明する。

10館ある東京都新宿区立図書館では全体で1冊を購入予定。同区立中央図書館の藤牧功太郎館長は「ご遺族の心情に十分配慮しなければならないが、利用者の知る権利を妨げるわけにはいかない」と話す。通常の書籍と同様、開架に置いて貸し出しも行う。日本図書館協会の山本宏義副理事長は「図書館には市民への情報提供という基本的使命がある。その中で遺族の心情などを勘案し対応している」と理解を求めた。

「利益優先の印象強い」
碓井広義・上智大教授(メディア論)の話
「出版や表現の自由は何人にも保障されており、守られなければならない。ただ内容に関して倫理観や道徳心に照らしての判断は別個の問題だ。太田出版は『社会的意味がある』と大義名分を掲げているが、『完全自殺マニュアル』などこれまでの出版傾向を見ると、利益優先の印象が強い。出版は公共性のある事業であり、その良心が問われている」

「彼は厚生していない」
ノンフィクション作家の門田隆将氏の話
「一言で言えば無残な本。自身の心理の核心を全く書いていない。怒りを覚えたのは『この本を書く以外に、もう自分の生を掴み取る手段がありませんでした』という部分。快楽を求めて他人の命を絶ち切った人間が言うせりふではなく、究極の自己愛、自己中心主義だ。他者への憐憫の情が感じられず彼は反省も更生もしていないのだろう」

(産経新聞 2015.6.29)


映画の“世界観”と、つながったCM

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日経MJ(流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。

今回の掲載分では、住友林業の「ずっと住みたくなる住まい」篇を取り上げました。

映画『海街diary』との、タイアップCMです。


住友林業 
家のコンセプト 映画とつながる
是枝裕和監督の新作映画『海街diary』は、鎌倉の古い家で暮らす姉妹の物語だ。しっかり者の長女(綾瀬はるか)、自由奔放な次女(長澤まさみ)、のんびりした三女(夏帆)、そこに腹違いの四女(広瀬すず)が加わる。

とはいえ、スクリーンには驚愕(きょうがく)の事件も、泣かせる難病も、気恥ずかしい大恋愛も登場しない。自分たちの居場所で積み重ねていく日常の豊かさを、静かなドラマとして描き切った秀作だ。終了後、「もっと見ていたい」と思わせる、心地よい物語的時間が流れている。

映画とのタイアップCMは珍しくないが、両者が自然につながったものは多くない。小津安二郎監督に通じる味わいを持つこの映画では、長い年月を経た家が、不在の父や母の代わりに娘たちを見守っている。帰る場所、ずっと居ていい場所としての家。それは商品のコンセプトと見事に重なるのだ。四姉妹が住む海街を、いつか訪ねてみたくなる。

(日経MJ 2015.06.29)

バカリズム脚本「かもしれない女優たち」に拍手!

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日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、バカリズム脚本の単発ドラマ「かもしれない女優たち」について書きました。 


フジテレビ系「かもしれない女優たち」
後味のいいパラレルワールド
ドラマ「素敵な選TAXI」(関西テレビ・フジテレビ系)の脚本で、第3回「市川森一脚本賞」の奨励賞を受賞したバカリズム。23日に放送されたこの単発ドラマも、受賞作同様、“人生の岐路と選択”というテーマに挑んだ野心作だ。

ヒロインは竹内結子、真木よう子、水川あさみの3人。女優として成功している彼女たちが、「あり得たかもしれない、もう一つの人生」を競演で見せるところがミソだ。

たとえば竹内本人は15歳で事務所にスカウトされたが、もしもそれを断っていたらという設定。大学を出て編集者になった竹内は、恋人との結婚を望みながら、なかなか実現できないでいる。

また女優志望の真木と水川は、バイトを続けながらオーディションを受けては落ちる日々だ。もうあきらめようかと思っていた頃、思いがけない出来事が起きる。

エキストラ扱いで、顔も映らない端役を務める現場。邦画を見るとミジメな気分になるからと、レンタル屋で洋画ばかり借りる日常。いきなり売れっ子となった新人女優への複雑な思い。バカリズムの脚本は、芸能界のリアルを苦笑いのエピソードで描いていく。

3人の女優、それぞれの軌跡と個性を生かした物語だからこそ、本人たちが演じる「あり得た自分」が絶妙に絡み合い、後味のいいパラレルワールドが成立していた。

(日刊ゲンダイ 2015.06.30)

【気まぐれ写真館】 実習授業「テレビ制作(1)」現在編集中

書評した本: 『昭和天皇は朝日新聞がお嫌いだったのか』ほか

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池原冨貴夫    
『昭和天皇は朝日新聞がお嫌いだったのか
      ~巨大メディア―その捏造の歴史』
ベストブック 1296円  

刺激的なタイトルだ。もちろん、新聞の好き嫌いをうんぬんする一冊ではない。この国の歴史に、朝日新聞というメディアはどのような影響を与えてきたのか。戦後70年の今年、刊行が始まった『昭和天皇実録』な どの文献を読み込みながら、独自の視点で検証した労作である。

著者は信託銀行の元役員で、現在はフリージャーナリスト。敗戦までの朝日新聞を読んでの総括は、「戦争の朝日」か、「煽動の朝日」だ。たとえば、当時の一大キャンペーン「撃ちてし止まむ」。これは『古事記』からの引用だが、標語としての制作・普及は、陸軍と朝日の“共同事業”だった。特に普及面では、100畳敷きの巨大ポスターの掲示をはじめ、勇ましい記事の連打などで朝日は大活躍した。

著者は、日米開戦と同時に朝日が掲載した、「社長以下、従業員一同が軍に献金」という社告も見逃さない。また、後のミッドウエー海戦の敗北を「肉を切らせて骨を断つ捨身戦法に出て、これを成功したもの」と報じたことも然りだ。

元々、朝日は大正デモクラシー以来の「リベラル路線」だった。それが「軍縮支持」の記事などで販売部数が減り始めたことから方針転換。満州事変で完全に“開眼”する。中国悪人説を流布する本を出版し、満州国を承認したヒトラーとナチス・ドイツを礼賛し始めたのだ。そんな大本営追従の体質は、決して過去のものではないと著者は言う。なぜなら現在の朝日も、「中国共産党の僕(しもべ)のようにチベットやウイグルの『民族浄化』に終始『無言』を通している」からだ。

戦後の朝日は、「一億火の玉」の代わりに、「一億総懺悔」「民主化」「市民」を常套句として、煽動を続けていく。しかも誤報という弱点を抱えたままだ。先の「挺身隊慰安婦」問題もまた、その延長線上にある。確かに、昭和天皇は朝日がお嫌いだったかもしれない。
  

磯崎新、藤森照信 
『磯崎新と藤森照信の茶席建築談義』
六耀社 3888円

日本を代表する建築家と、東大名誉教授の建築探偵。2人が茶と茶室の歴史を軸に日本建築を捉え直す。石と木の文化に始まり、茶を中国から導入した栄西、茶の巨人・利休、さらに『茶の本』の岡倉天心へと進む。究極の建築物である茶室には思想も凝縮されている。

(週刊新潮 2015.06.25 風待月増大号)


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