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笑いと風刺両立の「民王」

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北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、夏ドラマについて書きました。


猛暑に負けなぬ夏ドラマは?
笑いと風刺両立の「民王」
 全国的な猛暑が続いている。しかも安保法案、新国立競技場問題など、精神的にも疲労度の高い夏だ。せめてテレビドラマくらいは心の涼を提供して欲しい。

 しかし、夏ドラマがスタートしてみると、別の意味で寒くなるようなものが並んでいる。代表格は、いつの時代の恋愛ドラマかと不思議になるほど、既視感のある場面展開が暑苦しい「恋仲」(フジテレビ―UHB)だ。「あまちゃん」バブルの福士蒼汰が主演、演技力に疑問符がつく本田翼がヒロインというキャスティングの弱さも隠しようがない。

 また往年の人気アニメを実写化した「ど根性ガエル」(日本テレビ―STV)は、Tシャツに張りついた平面ガエル、ピョン吉の声を担当する満島ひかりの天才的上手さと、高度なCG技術だけが目立つ珍品。ニートでだらだらしたひろし(松山ケンイチ)や、離婚して不貞腐れている京子ちゃん(前田敦子)に、見る側は困惑するばかりだ。

 一方、そんな中で絶好調なのが、ヒットシリーズとなった「花咲舞が黙ってない」(日本テレビ―STV)である。「お言葉を返すようですが・・」という言葉をきっかけに、舞(杏)が見事なたんかを切るのは、水戸黄門の印籠のようなものだ。一話完結で見終わって清々しい作りは、まさに夏向きだろう。

 そして、「花咲」と同様、池井戸潤の小説を原作とするのが「民王(たみおう)」(テレビ朝日―HTB)だ。時の総理大臣(遠藤憲一)と、その不肖の息子(菅田将暉)の心が、突然入れ替わってしまうという破天荒な設定だが、話が外交など国家レベルにまで発展するあたりが大いに笑える。

 基本的には政治や権力をめぐるドタバタコメディでありながら、一種リアルな風刺劇になっている点が秀逸だ。この夏一番の清涼剤かもしれない。

 もう一本、意外な佳作がある。それは「表参道高校合唱部!」(TBS―HBC)で、香川県小豆島から東京の私立高校に転校してきた合唱好きの女子生徒(芳根京子)が、廃部寸前の合唱部の再建に奔走する物語だ。

 このドラマの良さは、劇中の歌に本物感があり、仲間と歌う合唱の楽しさが伝わってくること。さらに芳根をはじめ、森川葵、吉本美憂、志尊淳など“新たな波”を感じさせる若手俳優たちの競演である。特に、単なる表層的な美少女ではなく、地に足のついた骨太な少女像を体現している芳根に注目したい。変化球の「民王」と並んで、猛暑に負けない元気が出る、直球勝負の青春ドラマだ。

(北海道新聞 2015年08月03日) 




ペプシCM 古くて新しい「桃太郎」の物語

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日経MJ(流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。

今回の掲載分では、ペプシストロングゼロ「桃太郎」の新作を取り上げました。


サントリー食品インターナショナル「ペプシストロング ゼロ」
古くて新しい桃太郎の物語
物語CMの傑作として定着した、人気シリーズの最新作だ。今回スポットが当たるのは桃太郎の仲間であるキジ。

力で一族を支配していた兄のカラスが鬼の仲間となった上、自らも鬼と化してしまう悲劇が語られる。圧倒的な想像力と映像で生み出されるのは、炎の戦場である。

それにしても、なぜ桃太郎の物語なのか。理由としてまず挙げられるのは、多くの人が常識として共有する、日本一有名なストーリーとキャラクターだということだ。

次に、昔の和歌(本歌)を自作に取り込んでいく技法、「本歌取り」の伝統に則った作品であること。

さらに、近年当たり前になった、先行する創作物のキャラクターを利用した「二次創作」にも該当する。つまり、古くて新しいクリエイティブの形がここにあるのだ。

自分より強いヤツを倒すには、仲間の存在が不可欠。友情・努力・勝利は「週刊少年ジャンプ」のモットーでもある。桃太郎たちの戦いの旅は続く。

(日経MJ 2015.08.03)

乃木坂46がトライする、なんちゃってスポ根ドラマ

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日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、乃木坂46の初主演ドラマ「初森ベマーズ」を取り上げました。

「初森ベマーズ」は、ソフトボールのチーム名。

ドラマの中で、本当は映画「がんばれ!ベアーズ」にあやかって、「初森ベアーズ」にするはずだったのに、部活の申請書に書いた字が下手で、「ア」が「マ」として受理されちゃった、という笑える経緯が描かれていました。

それにしても、ベマーズって何だ?(笑)


テレビ東京系「初森ベマーズ」
怪優と美少女の親和性も深夜ならでは
「ドラマ24」が始まったのは2005年。この10年間、「湯けむりスナイパー」「モテキ」「まほろ駅前番外地」「みんな!エスパーだよ!」など、ジャンルに関係なく、クセのあるマニアックなドラマを作り続けている。その実績が評価され、今年、第52回ギャラクシー賞「特別賞」を受賞した。

現在放送中の「初森ベマーズ」は、ちょうど40作目にあたる。夏、甲子園、野球という連想なのか、ソフトボールチームが舞台のスポ根ドラマ。しかも主演は乃木坂46だ。ドラマ初主演という美少女軍団のトライは、いかにもこの枠らしい。

下町にある初森公園が、都市開発で消滅しようとしている。それを覆すため、開発会社会長のセレブ娘(白石麻衣)が率いる強豪チームに、ソフトボール未経験の女子高生たち(西野七瀬、深川麻衣など)が挑むのだ。

選手集めに始まり、監督探し、不慣れな練習と話は進むが、かつての「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系)のような、ガチな展開ではない。あくまでも、乃木坂メンバーが懸命に演じるそれぞれのキャラクターと、「アストロ球団」的トンデモシーンを笑って楽しむ、ゆる~いドラマだ。

ちなみに、「ルーズヴェルト」で監督だった手塚とおるが、ここでも監督を務めているが、本業は女装のスナックマスター。怪優と美少女の親和性も深夜ならではだろう。

(2015.08.04)

夏ドラマの変化球『民王』が、なんだかスゴい!?

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ビジネスジャーナルの連載、碓井広義「ひとことでは言えない」。

今回は、夏ドラマの中からTBS「表参道高校合唱部!」と、テレビ朝日「民王」を取り上げました。


連ドラ『民王』が、なんだかスゴいぞ!
 7月に始まった、夏の連続テレビドラマ。恋愛モノから企業モノ、リメイクモノから新作まで、さまざまな趣向が並んでいる。そんな夏ドラマの中から、猛暑に負けない元気が出る良作を選んでみた。

直球勝負の青春ドラマ、『表参道高校合唱部!』

 “オリジナル脚本のドラマ”と聞けば、どこか応援したくなる。池井戸潤の小説が原作の『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)も、往年の人気アニメを実写化した『ど根性ガエル』(同)も結構だが、ゼロから物語を生み出そうとするオリジナル・ドラマは、テレビならではの楽しみだからだ。

 『表参道高校合唱部!』(TBS系)の主人公は、香川県小豆島から東京の私立高校に転校してきた真琴(芳根京子)。親が離婚し、母親の実家で暮らすことになったのだ。とにかく合唱が好きで、廃部寸前の合唱部の再建に奔走する。

 初回を見て驚いたのは、連ドラ初主演という芳根が示すポテンシャルの高さだ。ヒロイン生来の明るさや意志の強さだけでなく、感情の細やかさまで表現している。何より、単なる表層的な美少女ではなく、地に足のついた骨太な少女像を体現している点に注目した。

 舞台となる高校には、生徒を「一軍」「二軍」「圏外」などとランク付けするスクールカーストや、米映画『キャリー』(1976年公開)を思わせるイジメも存在する。しかし、ヒロインを際立たせるためのイジメ描写なら、やりすぎないほうが得策だろう。

 このドラマのよさは、まず劇中の歌に本物感があること。仲間と歌う合唱の楽しさが伝わってくること。また芳根をはじめ、森川葵、吉本実憂、志尊淳など“新たな波”を感じさせる若手俳優たちだ。ドラマと共に成長する彼らを見てみたい。

クセになりそうな変化球、『民王(たみおう)』

 猛暑に圧倒されたかのように、全体的にイマイチ元気がない今期ドラマ。そんな中で、思わぬ拾い物をしたような1本が『民王』(テレビ朝日系)である。話はなんとも破天荒で、時の総理大臣・武藤泰山(遠藤憲一)と、そのバカ息子・翔(菅田将暉)の心が、突然入れ替わってしまうのだ。 

 2人は周囲に悟られないようごまかしながら、回復を待とうとする。だが、泰山の姿形となった翔は秘書官が書いた答弁を棒読み。しかも、まともに漢字が読めないため、野党からも失笑を買う。一方、見た目は翔だが傲岸無礼なままの泰山も、就活で訪れた会社で面接官を罵倒し、説教までしてしまう。

 登場人物の“心が入れ替わる”という設定はこれまでにもあった。大林宣彦監督作品『転校生』(82年公開)の幼なじみ男女や、『さよなら私』(NHK)の親友同士のアラフォー女性などだ。

 しかし、総理大臣父子となると、本人たちだけの問題では済まない。話が外交など国家レベルにまで発展するあたりが大いに笑える。基本的には政治や権力をめぐるドタバタコメディでありながら、一種リアルな風刺劇にもなっている点が秀逸だ。

 また、遠藤と菅田のテンションの高さが尋常ではない。2人はさだまさしの自伝ドラマ『ちゃんぽん食べたか』(NHK)でも父子を演じているが、まるで別人だ。ワニ顔を千変万化させる遠藤はもちろん、困惑するダメ息子を演じる菅田の怪演も一見の価値がある。同じ池井戸潤の原作だが、“黙ってない”のは花咲舞だけではなさそうだ。

(ビジネスジャーナル 2015.08.02)

【気まぐれ写真館】 暑中お見舞い

【気まぐれ写真館】 戦後70年8月6日 合掌

戦後70年夏、佐野眞一『沖縄戦いまだ終わらず』を読む

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佐野眞一さんの近刊『沖縄戦いまだ終わらず』(集英社文庫)。

2008年、佐野さんは『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』で、軍用地主や沖縄ヤクザなど、それまでタブー視されていた沖縄の暗部に斬り込みました。

その後も、沖縄問題の原点とも言うべき「沖縄戦」に目を向け、丹念に取材を続けます。この文庫本の元本である『僕の島は戦場だった~封印された沖縄戦の記憶』(13年刊)は、その成果でした。

中身は、濃厚にして重いです。援護法や遺族年金の実態と欺瞞。PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみ続ける戦災孤児たち。さらに、悲惨な「集団自決」の深層にも迫っています。

文庫化で加わったのが、昨年11月の沖縄県知事選のルポです。基地問題を考える上でも必読の一冊だと思います。




「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。

小田嶋 隆 『友だちリクエストの返事が来ない午後』
太田出版 1512円

東日本大震災以来、すっかり定着した「絆」。SNSの普及で勝手に侵入してくる「友だち」。本来、友人とは何なのか。その数が少ないことは罪なのか。微苦笑のコラムニストは、強迫観念と化した友情原理主義と向き合う。繋がり過ぎない生活も悪くないのだ。

      
河出書房新社編集部:編 『戦争はどのように語られてきたか』
河出書房新社 2052円

石原莞爾や大川周明から、中野重治、吉本隆明、加藤典洋まで約20名の戦争論が並ぶアンソロジーだ。「戦争にも正義があるし、大義名分があるというようなことは大ウソである」と坂口安吾は言う。“戦争のできる国”へと改造が進む今だからこそ読むべき一冊。


萩原魚雷 『書生の処世』
本の雑誌社 1620円

ぐうたら生活と著者は言うが、ひたすら本を読み、本について書く、修行僧のような年月が詰まった一冊。書評エッセイというジャンルからもはみ出し、「論」ではない人生を語っている。書生というより、本と共に生きる“活字バカ一代”。こんな男がいてもいい。


柴田哲孝 『下山事件 暗殺者たちの夏』
祥伝社 2160円

著者が、ノンフィクション『下山事件 最後の証言』で日本推理作家協会賞と日本冒険小説協会大賞を受賞したのは10年前だ。昭和24年7月5日、国鉄総裁の身に何が起きたのか。本書では小説という器を最大限に生かし、事実に基づく精緻でリアルな物語を展開する。

(週刊新潮 2015.08.06号)


【気まぐれ写真館】 暑中お見舞い(2) 東京37.7度 今年最高


上智大学教職員有志「安保法案」に関する声明

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「安保法案」に関して、上智大学教職員有志による声明が出ました。

私自身は、賛同者として参加しています。

以下、声明文です。


安全保障関連法案強行採決に抗議し、
同法案の廃案を求める
上智大学教職員有志による声明
A Statement by Concerned Faculty and Staff of Sophia University Denouncing the Forced Passage of Security-related Legislation and Demanding the Rejection of These Bills

 2015年7月16日、安倍晋三内閣は衆議院本会議において合計11の法案をまとめた安全保障関連法案を強行採決し、可決しました。同法案については、大部分の憲法学者をはじめ、多くの国民が憲法違反であるとし、また、同法案可決に反対する声が日に日に高まっています。そうした中での強行採決は、立憲政治の根幹を揺るがし、日本における民主主義の存続を危うくする暴挙と言わざるを得ません。

 私たちの上智大学は、キリスト教精神を基底とし、真実と価値を求めて、人間形成につとめることを教育理念の中心に据えています。人格の尊厳と基本的人権の尊重を脅かす戦争への参加を違憲立法で可能にしてしまうことは、「人を望ましい人間へと高める最上の叡智」(Sophia)を追究する本学の使命とおよそ相容れるものではありません。

 満州事変から軍靴の響きが日本国内でも日増しに強まっていた1932年春、カトリック信者の学生数名が軍事教練での靖国神社の参拝を拒否したとして軍部が配属将校を引き上げ、上智大学が存亡の危機に立たされるということがありました。信教の自由、学問の自由への弾圧が強化されるなか、上智大学もまた学生を戦場に送っていくことになりました。

 我々、上智大学教職員有志は、「上智の精神」を胸に立憲主義と民主主義の擁護を求める全てのソフィアンとともに、この強行採決に抗議し、同法案を廃案に持ち込むことを要求します。

2015年7月31日
上智大学教職員有志一同

On July 16, 2015 the Abe Cabinet forced a total of eleven security-related bills through the Lower House. An overwhelming majority of constitutional law scholars and many Japanese citizens believe these bills to be unconstitutional, and the number of people speaking out in opposition to the passage of these bills is growing day by day. The forced passage of the security-related bills amidst such protests can only be described as a reckless act that shakes the very foundation of constitutional government and threatens the future of democracy in Japan.

At the core of Sophia University’s educational ideal lies the Christian spirit that encourages humans to seek truth and value. This unconstitutional legislation will allow Japan to participate in war, threatening individual dignity and fundamental human rights. This is incompatible with the mission of this university, which is embodied in the meaning of our name “Sophia:” “the wisdom which is expressed in ethical activities that further the goals of human existence.”

In the wake of the Manchurian Incident, the drums of war grew stronger within Japan with each passing day. In the spring of 1932 several Catholic students at Sophia University were said to have refused to pay reverence at Yasukuni Shrine as part of their military training. In response, the military authorities recalled the commissioned officer assigned to the university, jeopardizing the university’s very existence. As the suppression of religious and academic freedom increased, students from Sophia University had to go to the battlefields.

With “the spirit of Sophia” in our hearts, we, the below-named members of the Sophia University faculty and staff, together with all Sophians who seek to defend constitutional government and democracy, denounce the forced passage of the security-related bills and demand their rejection.

July 31, 2015
Concerned Faculty and Staff of Sophia University

★上記の声明にご賛同下さる方は、下記サイトのページ最下段「続行」をクリックしていただき、フォームに必要事項をご入力下さい。皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。

https://docs.google.com/forms/d/1jLlZCwgVCq6AZ_w9cvcK034bicu-gfqWlRBS2SJXO1g/viewform

<賛同人募集の対象範囲>
1. 上智大学に在学中の学生および大学院生、上智大学の卒業生
2. 上智大学教職員及び、元教職員

★If you would like to support the above statement, please click the button [続行] of the bottom of this page and fill in the format there. We are calling for support from those who are somehow related to Sophia University. Thank you for your cooperation.

1. The undergraduate and graduate students, as well as the graduates of Sophia University
2. The present faculty* and staff, as well as the former faculty and staff of Sophia University
*Here "faculty" includes "adjunct faculty," such as part-time lecturers.


【気まぐれ写真館】 暑中お見舞い(3) 

「ネットフリックス」上陸で、日本の動画配信市場はどうなる?

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日本経済新聞に、「動画配信市場」に関する記事が掲載されました。

この記事の中で、コメントしています。


ネットフリックス上陸(下)
自由な視聴習慣 じわり
 有料配信市場の伸びしろ大きく
米ネットフリックスが9月2日から日本で動画配信を始めるが、国内にも以前から同様のサービスは存在する。現在のU―NEXTが配信を始めたのは、ネットフリックスが米国で開始したのと同じ2007年。ブロードバンドやスマートフォン(スマホ)の普及を背景に、NTTドコモなど新規参入が相次いだ。

「市民権」まだ

 しかし、日本の動画配信市場は米国などとは異なり“市民権”を得たといえるまでには成長していない。そもそも米国では有料のCATV経由でテレビを見る習慣があり、動画配信はその代替として受け入れられやすかった。

 日本の事情は異なる。メディア事情に詳しい上智大学の碓井広義教授は「広告に支えられた民間放送が充実しており、お金を払ってテレビを見るという文化が定着していなかった」と指摘する。

 変化の兆しはある。「動画配信は私の日常生活には欠かせない」。神奈川県鎌倉市に住む会社員、高橋恵さん(29)は就寝前など時間があれば、スマホで国内外のドラマや映画を楽しむ。視聴時間は1日平均2時間程度。地上波テレビはほとんど見ていない。「自分の好きな時間に好きな場所で見られる」という動画配信が手放せない。

 NHK放送文化研究所が一般視聴者を対象に実施した15年の調査では、1日にテレビを見る時間が1985年の調査開始以来初めて短くなった。逆に動画を含めたインターネットや録画番組を見る人は増加。スマホなど番組を見る手段の多様化もあって、「決まった時間にテレビを見る」という習慣は薄れつつある。

地上波と融合

 日本テレビ放送網は14年4月、ネットフリックスのライバルである米動画配信大手、Hulu(フールー)の日本事業を買収した。フールーは11年から日本でサービスを始め、約60万人の会員を持っていた。日テレは買収後に日本人になじみのあるドラマなどを充実させ、会員数を100万人以上に増やしている。

 6月には俳優の唐沢寿明さんを起用した独自ドラマ「ラストコップ」の第1話だけを日テレの地上波で放送。第2話以降はフールーで配信するなどテレビと動画配信の融合にも力を入れる。

 日本映像ソフト協会などの調べによると、14年の有料の動画配信サービスの市場規模は614億円。DVDなどの販売やレンタルを含めた映像ソフト全体の約1割にとどまる。動画配信の伸びしろは大きいとも言える。

 フールーの日本事業の運営会社、HJホールディングス(東京・港)の船越雅史社長は「日本では動画配信サービスの認知度はまだ低い。市場拡大の余地は大きく、ネットフリックスの参入がきっかけになれば」とライバル登場を歓迎する姿勢を示す。

 日本は世界有数のブロードバンド大国でもあり、動画配信のインフラは整っている。碓井教授は「若者を中心にコンテンツにお金を払うことに抵抗感が薄れている」としたうえで、「動画配信サービスは着実に広がる」と予想する。

 今後の本格的な普及に向けて最も重要なのは番組コンテンツの充実だ。ネットフリックスが有力な独自番組を前面に出して米市場を席巻したように、日本勢を含めた各社の競争が本格化する。(村松洋兵、細川倫太郎、シリコンバレー=小川義也)

(日本経済新聞 2015.08.08)

【気まぐれ写真館】 戦後70年8月9日 合掌

猛暑の夏こそ映画館(1) 「ジュラシック・ワールド」

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猛暑の夏こそ映画館で涼もう!ということで、まずは「ジュラシック・ワールド」。

シリーズ第1作「ジュラシック・パーク」の公開が93年だから、もう22年になります。

14年ぶりとなる、この第4作「ジュラシック・ワールド」まで来ると、恐竜たちの映像は、もう完全に「そこにいるよね」状態で、ひたすら感心。

パークがワールドに進化して、でも、利益のためなら遺伝子組み換えでも何でもやっちゃう、人間の身勝手や欲望は、あまり変わっていません。

えーと、作品について、ひとことで言うと・・・・

巨大観光地であるジュラシック・ワールドは、結構凄まじい、“殺戮の島”でした(笑)。

でも、それでいながら、後味が悪くないのは、さすがスピルバーグ総指揮です。


猛暑の夏こそ映画館(2) 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

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「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」、「ジュラシック・ワールド」に続いて、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。

他にも「ミッション・インポッシブル」や、少し先には「スター・ウオーズ」の新作もあるし、何やら、いつの時代のラインナップなのか、分からなくなってきますね。

で、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」です。

同じジョージ・ミラー監督作で、マッドマックスという名の主人公ではあるけれど、かつての、メル・ギブソン主演の「マッドマックス」シリーズとは、いわば”別物”と思ったほうがいいかも。

いや、別物だから悪いんじゃなくて、新たなSFアクション映画として、十分楽しめます。

とにかく、コワモテなクルマが爆走、爆走、また爆走。

ただ、正直言って、カーアクションの迫力は、もうお腹いっぱいでしたが、物語というか、ストーリーとしては、どうにもイマイチな感じで、個人的にはやや残念。

マックスのトム・ハーディより、女戦士フュリオサのシャーリーズ・セロンのほうが印象に残った1本でした。

【気まぐれ写真館】 暑中お見舞い(4)


【気まぐれ写真館】 暑中お見舞い(5)

限界集落”再生”ドラマ「ナポレオンの村」の見どころ

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日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、TBS日曜劇場「ナポレオンの村」について書きました。


日曜劇場「ナポレオンの村」(TBS系)
唐沢演じる“スーパー公務員”は
緩急自在の芝居で見せるが・・・
今年はじめに放送されたドラマ「限界集落株式会社」(NHK)。過疎の村に現れた経営コンサルタント(谷原章介)が、村人たちに「農業はやり方次第で儲かる」と説き、さまざまなアイデアを実践していく物語だった。

一方、こちらは限界集落を抱える地方自治体に赴任した公務員(唐沢寿明)が主人公だ。効率優先の市長(沢村一樹)が廃村扱いするこの村を、柔軟な発想と抜群の実行力で崖っぷちから救おうと奮闘している。

このドラマの見どころは、唐沢が演じる“スーパー公務員”が何を企画し、いかに達成するかだ。2回目には、村で作られた米を、ローマ法王に献上して食べてもらうという驚きの仕掛けが登場した。しかも、このエピソードは、原案本「ローマ法王に米を食べさせた男」(講談社)のタイトルにもなっている実話なのだ。

著者の高野誠鮮(たかの じょうせん)氏は、構成作家などを経て、故郷の石川県羽咋市に寺の後継ぎとして戻り、同時に市役所の臨時職員になったという異能の人物だ。

超が付くほど前向き。いつの間にか周囲を巻き込んでいく求心力。いい意味で公務員の既成概念から大きくはみ出た主人公を、唐沢はアッケラカンと明るく、また緩急自在の芝居で見せている。

ただ一点、「ナポレオンの村」という、ミスリード的なタイトルで損をしているのが残念だ。

(日刊ゲンダイ 2015.08.11) 

猛暑の夏こそ映画館(3) 「人生スイッチ」

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押してはいけない、切り替えてはいけない、人生のスイッチかあ。

6つのエピソード。

いずれも、なかなかエグイです。

他者の“怒り”って、その深さというか、度合みたいなものは、分かっているようでいて、本当のところは分からなかったりします。

気をつけないと、命にかかわるぞ、と。

何しろ、どのエピソードでも、かなりの暴力が行使されます。

一番好きなのは、ヒコーキの中でのお話でした。

中身は、見てのお楽しみということで。

アルゼンチン映画というのも珍しい。

この作品には、タンゴの激しさと笑い、そして苦味が効いています。

脚本・監督はダミアン・ジフロン。

名前を覚えておいていい才能だと思います。

【気まぐれ写真館】 残暑お見舞い(信州)

2015「夏ドラマ」のこと

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「ヤフー!ニュース個人」に連載している、碓井広義の「わからないことだらけ」。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuihiroyoshi/

最近の記事を、転載しておきます。


笑いと風刺の夏ドラマ「民王」が、
猛暑を吹き飛ばす!?
全国的に、バンコクを凌ぐような猛暑が続いている。それに加えて、安保法案、新国立競技場問題、TPP閣僚会合と、体だけでなく精神的にも疲労度の高い夏だ。せめてテレビドラマくらいは心の涼を提供して欲しいと思う人は多いのではないか。猛暑を吹き飛ばしてくれそうな夏ドラマを探してみた。

既視感にあふれた恋愛ドラマ「恋仲」

7月に今期ドラマがスタートしてみると、別の意味で寒くなるようなものが目立った。まず、“王道ラブストーリー”を自称する「恋仲」(フジテレビ系)だ。

「あまちゃん」バブルを引きずる福士蒼汰が主演で、以前から演技力に疑問符がつく本田翼がヒロインだが、キャスティングの弱さは隠しようがない。

確かに、「あまちゃん」の福士は良かったかもしれないが、彼をいきなり月9の主役として扱ってよかったのか。本田もモデルとしてはいいが、女優としての需要はあるのか。制作側に、そのあたりの読み違いがあったとしか言いようがない。

肝心のストーリーも、非常に既視感のある場面展開やセリフが続いて、過去の恋愛ドラマのパロディに見える。これが月9として渾身の一作だと言われると困ってしまうほどだ。

“声優・満島ひかり”ばかりが光る「ど根性ガエル」

往年の人気アニメを実写化した「ど根性ガエル」(日本テレビ系)は、Tシャツに張りついた平面ガエル、ピョン吉の声を担当する満島ひかりの天才的上手さと、高度なCG技術だけが、やけに印象に残る。ストーリーが大事なドラマで、声の出演とCGが注目されるのでは本末転倒だろう。

それにしても、なぜ、ここまで原作の世界観を壊してしまう必要があったのか。見る側は、ニートでだらだらした30歳のひろし(松山ケンイチ)や、離婚して帰ってきて不貞腐れている京子ちゃん(前田敦子)に困惑するばかりだ。しかも前田の演技には奥行きがなく、芝居はAKB48を卒業した頃にまで後退したようにさえ見える。

一方、同じ日本テレビ系ながら好調なのが、ヒットシリーズとなった「花咲舞が黙ってない」である。「お言葉を返すようですが・・」という言葉をきっかけに、舞(杏)が見事なたんかを切るのは、水戸黄門の印籠のようなものだ。一話完結で見終わってすがすがしい作りは、まさに夏向きだろう。

笑いと風刺の変化球コメディ「民王(たみおう)」

「花咲」と同様、池井戸潤の小説を原作とするのが「民王」(テレビ朝日系)だ。時の総理大臣(遠藤憲一)と、その不肖の息子(菅田将暉)の心が、突然入れ替わってしまうという破天荒な物語である。

登場人物の“心が入れ替わる”という設定はこれまでにもあった。大林宣彦監督「転校生」(82年公開)の幼なじみ男女、ドラマでは「パパとムスメの7日間」(TBS系)の父と娘、「さよなら私」(NHK)の親友同士のアラフォー女性などだ。

しかし、総理大臣父子となると、本人たちだけの問題では済まない。話が外交など国家レベルにまで発展するあたりが大いに笑える。基本的にはドタバタコメディでありながら、政治や権力をめぐる風刺劇にもなっている点が秀逸だ。この夏一番の清涼剤かもしれない。

遠藤と菅田のテンションの高さも尋常ではない。2人はさだまさしの自伝ドラマ「ちゃんぽん食べたか」(NHK)でも父子を演じていたが、どちらもまるで別人だ。ワニ顔を千変万化させる遠藤はもちろん、傍若無人な父親の心を持ったダメ息子を演じる菅田の怪演も一見の価値あり。“黙ってない”のは花咲舞だけではなさそうだ。

直球勝負の青春ドラマ「表参道高校合唱部!」

もう1本、意外な佳作がある。「表参道高校合唱部!」(TBS系)は、香川県小豆島から東京の私立高校に転校してきた合唱好きの女子生徒(芳根京子)が、廃部寸前の合唱部の再建に奔走する物語だ。

このドラマの良さは、まず劇中の歌に本物感があり、仲間と歌う合唱の楽しさが伝わってくること。また芳根をはじめ、森川葵、吉本美憂、志尊淳など“次世代”を感じさせる若手俳優たちの魅力である。特に、単なる表層的な美少女ではなく、地に足のついた骨太な少女像を体現している芳根に注目したい。「民王」と並んで、猛暑に負けない元気が出る夏ドラマだ。

(碓井広義の「わからないことだらけ」2015.08.04)
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