産経新聞に、夏ドラマの「視聴率低調」をめぐる記事が掲載されました。
この中で、コメントしています。
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佳作、意欲作もあるが・・・
夏バテ?連ドラ低迷
7月期の民放連続ドラマの視聴率が全体的に低調だ。物語が進み、徐々に評価を集める作品も出てきたが、数字の上では目立ったヒットが出ていないのが現状だ。連ドラも夏バテ気味なのだろうか。(三品貴志)
10%以上は3本
「予想よりことごとく低い。他局も良くできているものが多いと感じるので、かなり意外だ」。日本テレビの小杉善信専務は7月末の記者会見で、伸び悩む各局の連ドラの視聴率について、そう打ち明けた。
8月16日時点で各話平均視聴率が10%以上を維持しているのは、日テレ系「花咲舞が黙ってない」(水曜午後10時)約14%▽同「デスノート」(日曜午後10時半)約11%▽フジテレビ系「恋仲」(月曜午後9時)約11%―の3作品のみ。
昨年7月期にはフジ系「HERO」(全話平均21・3%)、一昨年にはTBS系「半沢直樹」(同28・7%)といった大ヒット作が放送されていた。また、今年も全話平均視聴率が10%
を超えた連ドラが1月期に6作、4月期に4作あったのと比べても、今夏の低調さが目立つ。
出演者も薄味
民放幹部は「ヒットが出ることもあるが、夏はもともと連ドラの数字が伸びにくい」と語る。行楽シーズンを迎え、外出する視聴者が増えると考えられているからだという。また、録画再生やインターネットを通じた見逃し配信の環境が整備されてきたことも、視聴率を押し下げる要因になっているとみられる。
そんな中、幼なじみたちの恋愛模様を描いた「恋仲」の視聴率は1、2話で9%台を記録したが、3、4話では10%台に上昇。同局のよると、見逃し配信での再生率も好調といい、若い視聴者を中心に、徐々に支持を広げているようだ。
テレビ番組に詳しいコラムニストの桧山珠美さんは同作について、「既視感があり、大人が見ると登場人物に感情移入しにくい。ただ、オーソドックスなラブストーリーなので、若い視聴者には見やすいかもしれない」と指摘する。
一方で、「今夏はテーマも出演者も薄味のドラマが多く、全体的に視聴者を引きつけられていない。そもそも、1時間という連ドラの長さが人々のライフスタイルに合わなくなっているのでは」とも語り、視聴者の“連ドラ離れ”を懸念する。
30分に鉱脈
上智大の碓井広義教授(メディア論)も「なぜ、今になって漫画原作の『ど根性ガエル』(日テレ系、土曜午後9時)や『デスノート』を実写化するのか? 今夏は、作り手のやりたいことが見えないものが目立つ」と辛口だ。
一方、碓井教授は今夏のおすすめとして、テレビ朝日系「民王」(金曜午後11時15分)▽TBS系「ナポレオンの村」(日曜午後9時)▽同「表参道高校合唱部!」(金曜午後10時)―の3作を挙げる。
総理大臣の父と大学生の息子の心が入れ替わる「民王」について、碓井教授は「笑えるコメディーでありつつ、政治や権力に対する風刺になっている」と指摘。転校生が廃部寸前の合唱部を立て直そうとする「表参道高校合唱部!」については、「直球の青春ドラマだが、歌の力がドラマに生かされていて、大人が見ても気持ちが動かされる」と称賛する。
また、桧山さんは、容姿に恵まれない男女が協力して美男美女にアプローチするフジ系「ブスと野獣」(土曜午後11時40分)について、「勢いと破壊力のある意欲作。作り手が楽しんでいる雰囲気が伝わってくる」と語る。
同作が放送されているフジテレビ「土ドラ」枠は約30分間という短さが特徴。テレビ東京系で現在「初森ベマーズ」(金曜深夜0時12分)を放送している「ドラマ24」枠も40分間という短めの枠で、優れたテレビ・ラジオ番組を顕彰する今年の「ギャラクシー賞」特別賞を受賞するなど、存在感を増しつつある。桧山さんは「30分ほどの長さのドラマはテンポが良く、見やすいものが多い。今後はこうした30分ドラマに鉱脈があるのでは」と推測している。
(産経新聞 2015.08.18)