前田敦子が脱皮、石田ゆり子がエロ過ぎ?
今期ドラマの明暗
年明けから世間を騒がせている人気タレント、国会議員などの不倫騒動や芸能人カップルの熱愛――。その波がドラマにも押し寄せているのか“ドロドロな恋愛”や“ラブコメディー”が急増している。話題は呼んでいるのに、視聴率は低空飛行。春ドラマは一体どうなっているのか。
「録画やオンデマンド配信などドラマの見方の多様化で視聴率だけでは語れない時代に変わっています。数字が低い=つまらないとは一概には言えないのです」
そう語るのは上智大学の碓井広義教授(メディア論)。
今期は、“豪快に脱いだセクシーシーン”と“濃厚なキスシーン”が満載だ。まずは、前田敦子が“超恋愛体質”で二股交際や不倫におぼれていく政治部記者を演じる「毒島ゆり子のせきらら日記」(TBS系・水曜24時10分)。
AKBのあっちゃんという面影を脱ぎ去り、男性と躊躇(ちゅうちょ)なくキスをしまくり、肌を露出して抱き合う。「深夜の昼ドラ」というキャッチフレーズにもうなずける過激なシーンの連続。こんなあっちゃんを見たくないファンも多いだろうが、
「常に二股していないと不安な政治部記者というキャラクターはおもしろい。普通の女性を演じても『あっちゃん』という感じが強かったが、大胆な濡れ場にも挑戦して女優・前田敦子に脱皮。驚きと共に予想を超える楽しさですね」(碓井教授)
過激さで負けず劣らずなのが「不機嫌な果実」(テレビ朝日系・金曜23時15分)。林真理子原作のベストセラー小説を約20年ぶりに栗山千明主演でドラマ化した。稲垣吾郎演じる夫に満足できない栗山は、元カレと熱い口づけの末に不倫旅行。友人を演じる橋本マナミは、若い愛人とキャンディーを口移ししながら路チュー……。高梨臨演じるもう一人の友人は主人公の夫を寝取るなど、ドロドロすぎる展開が続く。
刺激的なこの作品、実は1997年に石田ゆり子、岡本健一らでドラマ化され大きな話題となった。前作も見ていたコラムニストの桧山珠美さんはこう話す。「稲垣の“潔癖症でマザコン夫”はハマリ役で見応え十分。栗山の“私だけが損している”という心の声など、あるある心理が赤裸々に描かれていて女性は共感しやすいはずです。だけど石田ゆり子版のほうが妖艶(ようえん)でセクシーで生々しかった。栗山らも体を張っていますが、エロスでは石田ゆり子が圧倒的ですね」
そんな石田ゆり子版を懐かしむ人には「コントレール~罪と恋~」(NHK・金曜22時)は必見。無差別殺人事件で夫を失った孤独なヒロイン・文(石田)が、犯人を取り押さえる際に過って夫を死なせてしまった元・弁護士(井浦新)と“許されざる恋”に落ちる切ないラブストーリー。「セカンドバージン」を書いた大石静のオリジナル脚本で、<石田ゆり子が麗しすぎる>と評判だ。
「大人の恋愛の描き方が抜群。40代半ばの文が自分の気持ちを抑えながらも、じわじわと情念があふれ出して行動に移すという描写が丁寧に描かれていて、ドキドキします」(碓井教授)
不倫ドラマは、常識的な判断を捨てて情念に走る過程が見どころ。孤独と絶望の淵にいた二人が情念を解き放つからこそ、豊潤な大人のドラマになるという。
(週刊朝日 2016年5月27日号)