しんぶん赤旗のリレーコラム「波動」。
今回は、ドラマ「トットちゃん!」(テレビ朝日系)について書きました。
丁寧に作られた「昭和ドラマ」
放送が始まる前、「大丈夫なのか」と勝手に心配していた。だが、杞憂だったようだ。先週始まった帯ドラマ劇場「トットちゃん!」(テレビ朝日系)である。
何しろ前作「やすらぎの郷」が、あまりに斬新だった。現在のテレビを支える“大票田”でありながら、高齢者層はずっと無視されてきた。そこに高齢者による、高齢者のためのドラマが出現したのだ。脚本家・倉本聰による一種の反乱、いや真昼の革命だった。
しかも高齢者しか楽しめなかったかと言えば、そんなことはない。秀逸なストーリーと魅力的な登場人物たちが多くの人をひきつけた。
第2作となる「トットちゃん!」は、あの黒柳徹子さんの物語だ。累計800万部の大ベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」や、続編「トットチャンネル」などによって黒柳さんの半生は広く知れ渡っている。映像化についても、昨年NHKが満島ひかり主演のドラマ「トットてれび」を放送したばかりだ。「手垢のついたネタ」と言われても仕方がなかった。
しかし始まってみると、予想以上に楽しめる「昭和ドラマ」になっている。黒柳さんが生まれる前の昭和4年にまで遡り、両親の出会いから丁寧に描いてきたことの効果だ。
父の黒柳守綱(山本耕史)はヴァイオリニストで、NHK交響楽団のコンサートマスターも務めた音楽家。母の朝(松下奈緒)も現在の東京音楽大学で学んだ声楽家だ。
制作側は、そんな両親の若き日のエピソードを、まるで彼らが主人公であるかのように、じっくりと見せてきた。おかげで視聴者側は時代背景を理解すると共に、「トットちゃん」というヒロインに出会う準備が十二分にできたのだ。
今週に入って、ようやく黒柳夫妻に赤ちゃんが誕生した。男の子を待望していた父が用意した名前が「徹」で、女の子だったため「徹子」とした話も微笑ましい。
またドラマの中では一気に小学1年生となり、後の黒柳さんを思わせる、学校という枠におさまらないユニークな少女が、ハラハラするような“活躍”を始めている。幼少期のトットちゃん役、豊嶋花の達者な演技を堪能しつつ、主演女優・清野菜名の登場を待ちたい。
(しんぶん赤旗 2017.10.16)